子どもを叩いてしまった! 真っ先にやるべきフォロー&NGフォロー

子どもを産む前は穏やかな性格だったはずなのに、子育てが始まってからは常にイライラしている。そんな人は多いはずです。

イライラに任せて理不尽なほどに怒鳴ったり、ときに手を上げてしまったり、ということはありませんか?

どんな親でも、そんな行動に対する自責の念に囚われた経験はあるはずですし、それは一度や二度ではきかないはず。

そこで今回は、定時制高校の講師や小中学校の教員を経験したのち、現在はコーチング事業などを行う株式会社 ドラゴン教育革命の代表である坂田 聖一郎さんに「親が子どもを叩いてしまった場合の対処法」などについてお話をお聞きしました。

子どもを叩いてしまったら…罪悪感を抱える前にやりたいこと

まず真っ先にやるべきフォローとは

——坂田さんのところにも、実際に「子どもを叩いてしまった」「怒鳴ってしまう」などの相談がくることはありますか?

坂田 聖一郎さん(以下、坂田)「私のところにくる相談は、実際に『叩いてしまった、怒鳴ってしまう』というよりも、子どもの行動や成績を見て『イライラしてしまう』『心配で口出しすることで喧嘩になる』という相談が多いですね。

なので、実際にどれだけの親が『叩いてしまう』ことや『怒鳴ってしまう』ことに悩んでいるのかの割合はお話ししづらいのですが、『イライラしてしまう』などと同じように、叩いてしまうことを子育てがうまくいっていない事象と捉えて悩んでいる人は多くいると感じています。

子どもを叩くにしても、子どもに対するイライラにしても、相談したいけれど誰に相談したら良いのかわからないということは共通して多くの人が持っていると思います」

——怒りに任せて子どもを叩いてしまった場合、どのようなフォローをするのが適切なのでしょうか?

坂田「子どもを叩いてしまった場合、するべきフォローとしてはふたつあります。

まず必ずやるべきフォローは『すぐに謝る』ことですね。謝ることはどんなことにも勝る一番のフォローです。

この際、『ついカッとなって叩いてしまった。でも、私は叩いてしまったことを後悔しているよ。ごめんなさい』などのように、素直な気持ちを伝えながら謝りましょう」

——素直な気持ちを伝えることで、子どもの気持ちに対してどのような効果があるのでしょうか?

坂田「子どもは叱られると、『自分が悪いのだ』と捉えることが多いのです。それがたとえ理不尽な体罰であっても『自分はダメな奴だ』や『叩かれた自分が悪い』と自己否定に陥ってしまいます。

しかし、親から素直に謝ることで、子どもは『大人でも間違ったことをする』という認識を持つことができるのです。

もうひとつのフォローとあわせて行うことで、子どもの自己肯定感を保ちやすくなります」

——もうひとつのフォローとはどのようなものですか?

坂田「もうひとつは、『お互いの改善点を話し合う』ことですね。

親と子ども、双方に課題があることを認め、直してほしい行動はどのようなものだったのか、これからお互いにどう行動していくのかということを考えていきます。

『あなたの行動のここが良くないと思う、でも私ももう叩かないようにしたいから一緒に変わろう』と声がけしてみましょう。

親が素直に謝って、話し合う、このステップを経ることで子どもは『自分だけがダメなのではない。行動を変えていけば良いのだ』と考え方が変わります。

このときに重要なのが、親子でアイデアを出し合うことです。親が一方的に押し付ける形で課題にアプローチしようとするのはやめましょう」

——子どもが萎縮せずにアイデアを出してくれるように、話し合いの中で親が工夫できることはありますか?

坂田「まず、子どもに向ける問いかけの種類を意識することが大切です。“詰問”ではなく“質問”することを心がけてください。

詰問とは『なんでできないの?』と、相手を責める問いかけです。これは過去に目を向けているので、問いかけられた時点で子どもはもうどうすることもできないのですよね。

一方、質問とは、過去を責めるのではなく『これからどうする?』と、未来をより良くするための問いかけです。普段から、問いかけを質問で行うことを意識すると良いですね。

話し合いの際も、問いかけの仕方を質問にして、『これからどうしていこうか?』というような、未来に向けたものにしましょう。

また、この質問に子どもから意見が出てきたら、こう付け加えてください。『私にできることはある?』と」

——年齢によってフォローの方法が変わることはありますか?

坂田「子どもの年齢や性別によって、叩いてしまったときの対処が変わることはありませんね。

いずれの年齢であっても、親から素直に謝ること、繰り返さないようにお互いに意見を出し合う、という方法は変わりません」

実は多くの人がやりがち…? 逆効果なフォロー

——子どもを叩いてしまったけれど、あえてフォローをしなくてもいいというシチュエーションはあるのでしょうか?

坂田「子どもを叩いてフォローをしなくても良い状況というのは、いかなる場合もありません。

手を上げたことに対して親がフォローしないと、子どもは『親から愛されていない』と感じ、自己否定をするようになります。

場合によっては、父親や母親という属性を超えて、『男性が怖い』『女性が怖い』という考え方が育ってしまい、今後の人間関係に不和を及ぼしてしまうこともあります」

——それでは、逆に「こんなフォローは逆効果になる」というものはありますか?

坂田「先ほど、するべきフォローとして『すぐに謝る』というものを挙げましたが、同じ謝るという行動でも『ただひたすらに謝る』という行動はNGですね。

ひたすら謝るだけでは根本的な解決にはつながりません。結局、他の場面でまた子どもを叩き、関係を悪化させてしまいます。

また、体罰の後にひたすらに謝るという行動は、子どもの親への依存を高めてしまう恐れがあるのです」

——「素直に謝る」ことと、似ていて非なる謝り方ですね。

坂田「そうですね。また、その『素直に謝る』ことと反するように、『叩いたことを正当化する』というのもNGなフォローの典型です。

『あなたがあんなことをしたから、私は叩いたのよ』というように、体罰を子どものせいにしてはいけません。双方に課題があることを理解し、お互いに意見を出し合うことで“叩かなくても済む方法”を考えましょう」

親が普段から持っておきたい心構え

——子どもを叩いてしまって大きな罪悪感を抱く親は多いですが、叩いてしまった後に親が陥ってはいけない考え方や精神状態はありますか?

坂田「まさに、『罪悪感を抱いて考え込んでしまう』というものが、陥ってはいけない状態ですね。

罪悪感は自分に責任を感じている状態で、言い換えれば、自分のせいにしているわけです。自分だけのせいにしても何も状況は変わりませんし、問題は解決しません。

先ほどNGなフォローとして『子どものせいにして体罰を正当化する』というものを挙げましたが、実はやっていることはこれと同じ次元のことです。

親がいくら罪悪感を抱えても、叩いてしまった事実は変えられません。罪悪感は捨てて、問題解決の思考に切り替えていきましょう」

——叩いたり怒鳴ったりという突発的な行動に出ないために、親が普段から心がけておきたいことや持っておきたい考え方はありますか?

坂田「まず、誰しもが『叩いて教育をするという選択を持っている』という事実を認めましょう。これを否定しても体罰はなくなりませんし、過剰な罪悪感の原因になります。

その事実がある中で、叩くという選択をしないために、さまざまな考え方や手段を身につける必要があるのです。

怒って叩くことで、子どもはおとなしくなりますし、教育効果があるように見えますよね。しかし、子どもに恐怖を植えつけることで行動を抑えつけることは、子どもが他人の顔色をうかがって行動する原因になります。

これでは、子どもが持つ将来の可能性まで抑圧してしまうことになりかねません。

繰り返し直してほしいことを伝えても、子どもの行動が変わらないという理由で叩いてしまったなら、そもそもの環境や仕組みを変える思考を持つべきですね。

具体的には、伝え方を変える、対象の物事に取り組む際の仕組みを変える、などです。この思考を持つことで、自分なりの『体罰をせずに教育する方法』を見つけることができると考えています」

また、坂田さんは叩いてしまった場合のフォローに際して、大切なことは「日常での関係づくり」だと話しています。

「子どもの人生は親のものではなく子どものものです。親はサポートすることはできても、コントロ―ルすることはできません。これをしっかり認識しておきましょう。

子どもは何があっても大丈夫、乗り越えられると信じて接すれば、子どもは普段からのびのびできるのです」

子どもにイライラしてしまうのも、声を荒げてしまうのも手を上げてしまうのも、坂田さんの言う「親は子どものサポート役」という前提を忘れてしまっているがゆえなのかもしれません。

ついつい、手を貸して口を出したくなりますが、グッとこらえて子どもを信用することが、いざというときに意見をしっかり出し合える関係性を築くことにつながるのではないでしょうか。

【取材協力】坂田 聖一郎(株式会社ドラゴン教育革命代表)

愛知教育大学教育学部卒業後、東京NSC9期に入学。同期だった現在「しずる」村上純とコンビを結成するも解散。その後、愛知教育大学大学院に入学。大学院生の傍ら、定時制高校で非常勤講師として国語を教える。卒業後、愛知県豊田市の正規教員として小中学校に勤務。2020年7月には「株式会社ドラゴン教育革命」代表取締役に就任。2022年「ままためコーチング塾」をスタート。

(ハピママ*/ Rina Onodera)

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