「切り返しで手の力はゼロ」U-25世代スイングセルフ解説/杉浦悠太

この春、日本大学を卒業する杉浦。まだ初々しいプロ本格一年目を迎える(撮影/服部謙二郎)

昨季賞金王の23歳・中島啓太をはじめ、21歳でPGAツアーに参戦した久常涼など、日本の男子ゴルフ界は若手の台頭が著しい。お互いに刺激し合う相乗効果で、まさに“強い世代”を形成しつつある。彼らはどんな経歴でゴルフをしてきたのか、そしてどんなスイングをしているのか。「U-25世代」の若者にスポットをあて、彼ら自身にイングをセルフ解説してもらった。

今や「アマチュアでツアーV」はトップ選手の登竜門

9回目に取りあげるのは愛知県出身、22歳の杉浦悠太だ。福井工大付属校2年時(2018年)に「日本ジュニア」で優勝。翌年にはナショナルチームメンバー入り。日大に進学し、23年に下部ツアーで史上8人目のアマチュア優勝を果たすと、同年のレギュラーツアー「ダンロップフェニックス」で大会初&史上7人目のアマチュアVを成し遂げた。すぐにプロ転向し、年が明けた24年にはアジアンツアーの予選会にも挑戦(ファイナルQTは32位で出場権獲得)するなど海外志向も強い。決して大柄ではないが「平均300yd飛びます」というそのスイングを、じっくりと見てみよう。

ビビらずに手の力を一回抜く

23年カシオワールドオープンにて。ドライバー連続写真(撮影/服部謙二郎)

―スイングのベースはどのように作ってきましたか?

小学校6年生のころから、地元・愛知県のETGA(江連忠ゴルフアカデミー愛知校)に通い始めて、そこで奥雅次(おくまさつぐ)コーチにスイングを教わってきました。アカデミーに通う前までは、幼いころからやってきたスイングのクセがなかなか抜けず、頭を左右に動かして打っていたのを覚えています。奥コーチに習うようになって、(頭の動きが)ちょっとずつ直ってきた感じです。

―頭の動きをどうやって直したんですか?

「頭を止めて打つ」というような直接的な対処法ではありませんでした。違うところを教えてもらっているうちに、いつのまにか頭の悪い動きが解消されたというのが正解かもしれない。片手アプローチなどをよくやっていましたけど、それが頭が動かなくなることにつながったんですかね…、自分でもちょっと分からないです(笑)。

―スイング中に意識していることはありますか?

始動ですね。テークバックをゆっくり上げるように意識しています。上げ始めのほんと最初のところだけ全体的にゆっくり目にしています。

―早く上げてしまうクセがある?

早く上がるのはいいんですけど、クラブの上がる位置がバラバラになりやすいので、それを直すためにもゆっくり上げています。どちらかというと、インに上がりやすくなっちゃうんです。それを直したいときに、ゆっくり上げるのが良かった。クラブ軌道は、だいたいプレーン上にクラブが上がっていればいいかなと思っています。

インでもなくアウトでもなくプレーン上にクラブを上げたい(撮影/服部謙二郎)

―奥コーチからの指導は?

ジュニアの頃から言われているのは、切り返しの「力み」です。調子が悪くなってくると、どんどん力が入ってきて、特に切り返しのタイミングで力む。そうなるともういろんなミスが出て、そのままいけば左行くし、嫌がっても右へ行くし。

―力が入る時は自分でも分かる?

いや、分からないんですよね。その球が出てようやく、「あ、いま力んでいたんだな」となる。そういうスイング(力みやすいスイング)でずっとやってきたので、逆に今は意識しないと力みが取れないんです。

―力みをとるためのコツなどはありますか。

切り返しで“手の力をゼロ”にする努力はしています。ゼロは言い過ぎですかね(笑)。

―両手とも?
そうですね。それぐらいやらないと僕は力みグセがあるので。ゼロにするイメージで、それでようやくみんなぐらいの力感になっている気がします。

切り返しのタイミングで手の力は限りなくゼロに近い(撮影/服部謙二郎)

―(優勝した)ダンロップフェニックスでは、うまく力が抜けていたと。

スイングのテンポも良かったですし、(力は)抜けていましたね。本当にその切り返しの部分だけ気を付けていました。フェニックスは狭いホールも多くて、狭くて抑えたいところなどは力は入りやすいのですが、でも「力が入っていたらどうせ曲がるので、だったら力を抜いて曲がったほうがまだいい」という思いでやっていました。

―クラブを持つ手は“頼りない”ぐらいということ?

グリップの力感はヘナヘナな感じです。でもそれのほうが絶対にいい球が出る。

―力感をとるために、奥コーチからはどんなアドバイスを。

力感が強くなると、結果的にひじが体から外れやすいので、ボールを胸の前に挟んで打つ練習はやりました。ボールを挟むとひじが体から外れないんで。

―具体的に力感はどう抜いていますか?アドレスから力を緩める?

力が入るときは、切り返しのときに力んじゃうんで、ビビらずにそこで一回、力を抜きます。そうすると、結果的に右わきも空かなかったりするので。人によって意識するところは違うと思うんですが、僕の場合は切り返しで「まだ力を入れないようにする」というのが効果的。アドレスの力感はあまり意識していないです。

ダンロップ、カシオ、日本シリーズと同級生の伊予翼(いよつばさ)さんがバッグを担いだ(撮影/服部謙二郎)

―現在のドライバーショットの飛距離は?

トータル300ydぐらいですかね。キャリー290ydぐらい。

―もともと飛ぶ方ですか?

“どちらかというと”ぐらいですかね。飛ばし屋ではないですが、平均よりは上かな。

―方向性に自信は?

曲がるときは曲がりますよ。ただ、このドライバー(パラダイム トリプルダイヤモンドS)に替えて、飛距離は落ちましたけど曲がらなくなりました。前のローグのほうが飛んでいましたけど、ちょっとスピンが少なくて難しかったんです。

―持ち球はフェード?

フェードっていっていいのかどうか…。なるべくストレートを打てるようにしていますが、それもその週のコンディションによって変わります。

23年カシオワールドオープンにて。ドライバー連続写真(撮影/服部謙二郎)

―打ちやすいのは?

基本は真っすぐなんですけど、調子によってバラつきはあって、(23年)アジアアマのときはドローっぽかったんですが、ダンロップフェニックスのときはフェードでした。

―奥コーチには頻繁に見てもらっている?

試合会場に来てもらうことはなくて、基本は動画を送るなどしてやり取りしています。試合になって「ヤバいな」という時にスイング動画を送って、アドバイスをもらっています。奥コーチからしたら、「急に動画が送られてくる!」と思っているはず(笑)。

―ダンロップフェニックスのときも動画は送った?

練習日の時点で調子がいいと自分は思っていたんですけど、奥コーチにスイング動画を送ったら、「切り返しがよくない」って返信が来て。たまたまスイングのタイミングが合っていて調子がいいと勘違いしていただけでした。スイング自体はちょっと怪しかったことに、自分では気づけていなかった。でも、悪くなる前にコーチのアドバイスを受けられて、ケア出来たのが良かったです。

―コーチには昔から見てもらっていることで気づいてもらえる部分がある?

本当、そうだと思います。自分では気づけずに、知らない間にそう(切り返しで力が入る)なっちゃうので。今後はちゃんと定期的に動画を送ろうと思っています(笑)。

優勝翌週のカシオワールドオープンにて(撮影/服部謙二郎)

レギュラーツアーで優勝したアマチュアは杉浦までに6人いた。倉本昌弘、石川遼、松山英樹、金谷拓実、中島啓太、蝉川泰果と、その名を見れば、日本の男子ゴルフ界をけん引する顔ぶればかり。7人目に名を刻んだ杉浦悠太は、今後どこまで大きくなっていくのか。2024年シーズンのさらなる飛躍に期待したい。(取材・構成/服部謙二郎)

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