「動画で撮らないと失敗する」異次元の速さ  時速500キロを超える「リニア中央新幹線」の最前線に潜入

新幹線よりも速い“時速500キロ”で東京・大阪間を結ぼうと、JR東海が研究・工事を進めている「リニア中央新幹線」。東京と名古屋間については先行して2027年の開業を目指しています。現況について、JR東海の丹羽俊介社長に話を聞きました。

まばたき注意!?時速500キロの車両が目の前をわずか2秒で通過

JR東海が1997年からリニアの研究を行っている山梨県の「山梨リニア実験線」。2023年、JR東海の社長に就任した丹羽俊介さんに案内してもらったのは、時速500キロの車両を間近で見学できる特別な部屋。

(JR東海・丹羽俊介社長)
「(通り過ぎる車両を)カメラで撮ろうとすると無理です。動画で撮っていただかないと失敗します」

「まばたき注意」と言われ、待っていると車両が向こう側から走ってくるも、あっという間に通り過ぎました。わずか2秒で走り去った車両、その名も『L0(エルゼロ)系“改良型”試験車』です。

(JR東海・丹羽俊介社長)
「新幹線の初代の車両というのは『0系』でしたもんね」

この改良型試験車は、従来の『L0系』に比べて空気抵抗が軽減され、騒音が改善された最新車両です。

(JR東海・丹羽俊介社長)
「リニアの場合は浮いて走行するので線路はありません。ガイドウェイと呼んでいますが、ガイドウェイの側壁にコイルが付いています」

このコイルと、車両に取り付けられた『超電導磁石』の作用で、時速500キロの浮上走行が可能になっています。

カーブや急勾配が気にならない乗り心地

続いて、実際に車両に乗車。乗り込む場所も、新幹線とは大きく違います。まるで飛行機のボーディングブリッジのような通路を通って、乗り込むと車内はスッキリとしたデザインで、両サイドにはライトもあり、快適な空間です。

(JR東海・丹羽俊介社長)
「リクライニング・背もたれの心地よさも改良を加えています」

東京・品川から名古屋までの所要時間は40分。仮眠を取る際には寝過ごさないよう注意が必要かもしれません。

今回走るのは、全長42.8キロの実験線です。走り出すと、時速150キロ前後でタイヤ走行から浮上走行に切り替わります。その後も加速を続け、あっという間に東海道新幹線の最高速度285キロを超え、ついに未知の領域“500キロ”を超えました。スピードが上がっても大きな振動や大きな騒音などはありません。

(JR東海・丹羽俊介社長)
「時速500キロでも十分に会話ができて、快適に過ごせるようになっています」

さらに実験線は、実際の品川・名古屋間の営業線で最も厳しい急カーブや勾配と同じレベルの設計になっています。その後徐々に減速しますが、東海道新幹線の最高速度である時速285キロを「ゆっくり」だと感じてしまうほど、“500キロ”は異次元の世界でした。

開業すれば地震や大雨・大雪など大災害への備えにも

リニアが開業したら、東京から名古屋間がこれまでの半分以下のおよそ40分に!さらに大阪までつながれば、人口7000万人規模の“巨大都市圏”が誕生します。

(JR東海・丹羽俊介社長)
「交流の頻度が上がれば、イノベーションなども活発になる。どんどん新しいビジネスが生まれるかもしれません」

また、同じく東京と大阪を繋ぐ東海道新幹線に加えて、リニアという「バイパス」ができることで、南海トラフ巨大地震などの大規模災害への抜本的な備えになります。

(JR東海・丹羽俊介社長)
「災害への備えとしてもう一本リニア中央新幹線を引いて、大動脈を二重系化していくことは日本をより強靭にするといった意味が大きい」

さらにトンネルが多いため、大雨や雪、強風などの自然の脅威に強いという特徴もあります。リニアのこれまでの走行距離は地球100周以上。国はすでに「営業レベル」に達していると評価していますが、肝心の開業はいつになるのでしょうか。

(JR東海・丹羽俊介社長)
「まだ静岡県の理解が得られていない状況なので、2027年の開業はなかなか難しい状況。なんとか1日でも早く開業にこぎ着けるべく全力を上げて頑張っていきたい」

正式な開業が読めない今、少しでも早い状況の進展が望まれます。

CBCテレビ「チャント!」1月16日放送

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