全力応援で半世紀 長崎の江頭さん(76) 家族や地域と絆紡いだ県下一周駅伝 送る最後の声援

約半世紀にわたり、沿道から応援し続けてきた江頭さん。今回も手旗を振り、声援を送っている=西彼時津町

 今年で長い歴史に幕を下ろす県下一周駅伝大会。特別な思いで最後の大会を迎えているのは出場する選手、監督だけではない。1972年の第21回大会から半世紀にわたって沿道で応援を続けてきた江頭玲子さん(76)=長崎市=もその一人だ。「私にとって県下一周は家族や地域の絆を感じられる大切な時間だった」。かつて夫や息子が走った舞台の思い出をかみしめながら、きょうも全力で選手に声援を送る。
 西彼時津町出身。時津中1年から鶴鳴女高(現長崎女高)卒業までの6年間、陸上に打ち込んだ。ただ、専門は短距離で、当時女子区間がなかった県下一周駅伝とは無縁だった。県下一周を応援し始めたのは、西彼(現西彼・西海)チームのメンバーだった澤勢正敏さん(79)との結婚がきっかけ。それからは冬の恒例行事になった。毎年、家族総出で応援した当時のことを今もよく思い出す。「あの頃は沿道が埋まるほどの大応援だった。見ず知らずの人とも仲良くなって楽しかった」
 大会前には西彼チームの合宿にも参加した。選手の家族同士で協力して食事をつくるなどサポートに奔走。自然と結束は強まり、いつのまにか選手だけではなくチーム全体が家族のような関係になった。「毎年のように関係者の結婚式があって、お祝い金で家のお金が尽きそうになったこともある」。県下一周で育んだ縁は今も続いている。
 数々の名勝負を間近で見てきたが、その中でも忘れられない大会がある。93年の第42回大会。当時鎮西学院高3年だった長男の澤勢逸朗さん(49)が初めてメンバー入りした時だ。初出場で第1日1区の大役。大声援の中、地元のたすきをかけて区間2位で駆け抜けた息子の姿を今でも鮮明に覚えている。陸上中心の家庭で普段はあまり話さなかったが、「県下一周駅伝のことになると会話が弾んだ」。たすきで地域と世代をつないできたこの大会が家族の絆も強めてくれた。振り返ってみるとそう思う。
 今大会も逸朗さんが西彼・西海チームの総監督として出場している。第1日から首位を快走し、2位大村・東彼チームに5分36秒差をつけて最終日を迎える。「最後の年に胴上げされる息子の姿を見られるかも」。ゴールテープを切る、その瞬間までこれまでと同じように声をからす。

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