パボン「雲の上にいるみたい」 2カ月前からのサクセスストーリー

ウィニングパットを決めて歓喜の雄叫び(Sean M. Haffey Getty Images)

◇米国男子◇ファーマーズインシュランスオープン 最終日(27日)◇トリーパインズGC サウスコース(カリフォルニア州)◇7765yd(パー72)

後半17番で1mのパーパットを引っ掛けて、リードは1打差になった。最終18番(パー5)は1打目をフェアウェイの左バンカー、それもアゴの手前に止まる不運。おかげで2打目は約100yd先の深いラフに捕まった。そこから、マチュー・パボン(フランス)がドラマを見せた。「ボールが蝶のように出た」―。深いラフから、渾身の3打目はバンカーを越え、145yd先のピン右2.5mにつくスーパーショット。ウィニングパットとなるバーディトライを決めると、体全体で歓喜を爆発させた。

「雲の上にいるみたい。夢みたいだ。信じられないよ」。31歳で、言葉どおり夢のような優勝だ。昨年11月、欧州ツアー最終戦「DPワールド ツアー選手権」の最終ラウンドで上がり4連続バーディを奪って5位。2024年の米ツアー(PGAツアー)出場権を得られる「同ツアーポイントランク上位10人」の8番目に滑り込んだ。

父と同じプロサッカー選手になる夢を断念し、ティーチングプロの母に導かれ、17歳で渡米してゴルフの道へ。2013年に20歳でプロ転向し、翌年から欧州の下部ツアーに参戦。プロ11年目の昨年、ようやく10月「スペインオープン」で欧州ツアー初優勝を手に。そこからわずか3カ月の“サクセスストーリー”となった。

「いつかはPGAツアーでプレーしたい、優勝したいと思っていた。でも、アメリカでプレーするプレッシャーはほとんどなかった。失敗したら、またヨーロッパでやり直せばいい。ベストを尽くして、その時その時を楽しめばいいと思っていた」

フランス勢においては、1999年「全英オープン」でジャン・バンデベルデが最終日の最終18番でトリプルボギーをたたき、プレーオフの末にV逸する“悲劇”があった。地道にキャリアを重ねたパボンが似たような窮地をしのぎ、フランス人初の米ツアー優勝を手に入れた。

© 株式会社ゴルフダイジェスト・オンライン