【ミャンマー】ガソリン価格が最高値更新[経済] 通貨安、物価高加速の恐れ

ヤンゴンの給油所。ガソリンは過去最高値となった=28日、ミャンマー(NNA)

ミャンマーの最大都市ヤンゴンで販売されるレギュラーガソリン価格が26日、約1年5カ月ぶりに過去最高値を更新した。通貨チャットの実勢レートが今月中旬からじわりと下落していることが、上昇圧力となっているもようだ。軍事政権下のミャンマー中央銀行は昨年12月、外国為替の管理政策を部分的に緩和したが、燃油をはじめとして輸入インフレの加速懸念が高まっている。

レギュラーガソリン「RON92」(オクタン価92)の価格は26日、前日比4.6%高の1リットル=2,705チャット(約191円)となった。2022年8月31日に記録した2,605チャットを超えて2,700チャット台に乗った。

ミャンマー燃料輸入・備蓄・販売監督委員会は昨年後半以降、従来1日ごとに見直していた燃油価格更新の頻度を減らし、12月以降は毎週金曜日の改定を続けている。ハイオク「RON95」(オクタン価95)は今月19日に前日比3.6%高の2,720チャット、26日に4.6%高の2,845チャットと2週連続で過去最高値を更新した。

一方、大型の非常用発電機などに多く使われる軽油類の価格は抑えている。26日は軽油とプレミアム軽油共に前日比0.8%高で、価格はそれぞれ2,450チャット、2,515チャットとなった。

月平均で見ると、ガソリン価格は今月、2カ月連続で最高値を更新しそうだ。昨年前半にチャット相場が比較的安定的に推移したが、後半以降は相場が不安定化。22年は8~9月に急激なチャット安が進んだが、年末にかけて落ち着いていた。

■実勢レート3500チャット台に

「米ドル次第だ」

ヤンゴンのタクシー運転手や通勤に自家用車を使う人など一般市民は、燃油価格が対米ドルのチャット実勢相場に左右されるとみる傾向が強い。中銀は22年8月以降、公定レートを1米ドル=2,100チャットで固定しているが、実勢レートは今月下旬に入って3,500チャット台と現地通貨安が一段と進んだ。

今回のチャット安の背景には、中銀が昨年12月、国内企業間のオンライン為替取引相場を「自由化」したことがある。公定レートと実勢レートの乖離(かいり)幅が広がる中、輸出企業が稼いだ外貨を公定レートで両替することを強制する規制も緩和しつつ、輸出振興による通貨安定化を図る方針に切り替えた。

軍政は従来、強制両替で調達した外貨を、必需品を輸入する業者に優遇レートで提供し、価格の安定化を図っていた。ここでの介入を弱め、一定のチャット安を容認したとされるが、実質的に為替管理を続けている。

中銀が監視する「オンライン取引レート」は今月、1米ドル=3,300チャット台で安定的に推移。実勢レートとの乖離幅は広がりつつある。

■不透明な中銀「外貨売り」

中銀は昨年12月の「自由化」以降、市場への外貨供給量を公表している。23年12月6日~24年1月25日の外貨販売実績は◇1億9,212万米ドル(約285億円)◇1,473万人民元(約3億円)◇5億400万バーツ(約21億円)——。ただ、売却時のレートは公表していない。

軍政は国営メディアを通じて中銀による外貨売りをアピールし、チャット安とインフレに対する市民の不安を払拭しようとしている。ただ、「中長期的にチャット安が進行するとみて、自動車や不動産など実物資産への逃避を進める」(ヤンゴン市民)流れに歯止めはかからない。

ミャンマーでは2月1日、国軍によるクーデターから3年を迎える。軍政に厳しい目を向ける米欧が節目に合わせて非難声明や追加制裁を出すのが慣例となっており、経済統制による市場のゆがみに加え、圧力強化がチャット相場を揺さぶる可能性がある。

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