認知症の母、介助減った 宇奈月に避難、輪島の沖﨑さん

段ボールベッドを用意してもらい、支援に感謝する沖﨑さん親子=黒部市宇奈月温泉のホテル

  ●温泉街散歩楽しむ

 能登半島地震で甚大な被害を受け、黒部市宇奈月温泉のホテルに2次避難している輪島市の被災者が、黒部市やホテルの温かい支援に感謝している。認知症の母と2人で身を寄せる沖﨑育代さん(58)=輪島崎町=は、1次避難所だった学校体育館での集団生活からホテルの個室に移り、介助の苦労が減った。「至れり尽くせりで申し訳ない」と感謝の思いを強くしている。

 沖﨑さんは、1次避難所だった輪島市鳳至小では、寒い体育館内で体育用マットの上に布団を敷く生活だった。自力で起き上がれない80代の母が夜中に30分おきにトイレに行くため、そのたびに手を貸して引っ張り起こしていたという。

 2次避難所の湯快リゾート宇奈月グランドホテルでは、避難者58人に世帯ごとに26部屋が用意された。沖﨑さんの母をはじめ希望した3世帯には黒部市が備蓄品の段ボールベッドを提供した。沖﨑さんのもとには到着した26日のうちに届き「自宅でもベッドを使っていた。これなら足を下ろすだけで立ち上がれる」と迅速な対応に感謝した。

 個室のホテルでは他人の目を気にせずに生活でき「本当に助かっている」と安堵した様子の沖﨑さん。温泉街には美しい雪景色が広がり、母と一緒に散歩も楽しんでいる。

 1日の発災時、2人は自宅の茶の間でテレビを見ていた。強い揺れに襲われ、母は「神様、仏様、堪忍して」と唱え続けていたという。家の中はたんすや本棚、仏壇、食器棚など多くの物が倒れ、足の踏み場もない状態だったが、茶の間には幸いソファとテレビしかなく、無傷で屋外に出て、何とか鳳至小近くの高台に逃れた。

  ●ペットの金魚も同室

 ホテルには20年以上前から飼っているペットの金魚2匹も連れてきた。通常、ペットの持ち込みはできないが避難者へのホテル側の配慮で許可され、2人は部屋の水槽前で笑顔を交わす。母から「ばあちゃんぼけやもんでね。迷惑かけとる」と声を掛けられると、沖﨑さんは「いいよ、いいよ」と優しい目でほほ笑んでいた。

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