輪島市が臨時浄水施設計画 3月中の全域断水解除へ

新たに取水、ろ過の設備が置かれる本江送水ポンプ場=28日午後2時、輪島市三井町本江

  ●川から取水、29日にも試験

 能登半島地震により、ほぼ全域で断水している輪島市が、早期の水道復旧を目指し、三井町と門前地区の計3カ所に新たな浄水施設を設ける計画を進めていることが28日分かった。臨時の取水口と、ろ過装置を新設して既存の浄水場から遠い地域の通水にめどを付け、2月末~3月末には市内全域で断水を解消させる方針だ。地震発生から29日で4週間。市は破損した水道管などの修復を急ぎ、市内外で避難生活を続ける被災者の帰宅につなげる。

 市によると、臨時の施設を造るのは、三井町の本江送水ポンプ場近くと、門前町の北川、浅生田の2カ所でいずれも付近の川から取水する。三井町は施設の整備を始めており、早ければ29日から試験的に通水させる。門前町の2カ所は2月上旬に設置する。水質の確認のため、当面は飲料用には使えないという。

 輪島市の水道網は大きく輪島、門前、町野の3地区に分かれ、それぞれ独立して稼働させている。水道が復旧した集落が一部あるものの、現時点で1万戸の断水が続いており、28日も自衛隊の給水車から水をくむ被災者の姿が見られた。

 水道再開のエリアを広げるには、各地にある浄水場周辺から徐々に水道管に水を通し、漏水箇所を調べて修復する必要があるが、浄水場から遠い地区は送水が遅れる恐れがある。

 特に三井町への送水管は、復旧支援活動などに入る車両が通行する基幹道路の地下にあり、工事が難しい。そのため、このルートを使わずに集落に水を供給する必要があると判断した。

 市上下水道局の担当者は「一日も早く自由に水を使える状態に戻すことで、市民が輪島に戻ったり、生活を立て直したりできるようにしたい」と話した。

  ●「思い切った策大切」

 上水道防災学が専門の宮島昌克金大名誉教授は輪島市の対策について「地上にある電線と比べて、水道は再開に時間がかかる。複数から送水して復旧を目指すのは有効な手段だ」と評価した。防災計画に詳しい藤生慎准教授は「想定を超える災害からの復興には思い切ったアイデアが大切だ」と強調した。

  ●羽咋全域2日再開

 断水が続いている羽咋市の大川町と釜屋町の一部で、2月2日に水道の利用が再開される見通しとなった。これにより市内の断水が全て解消される。岸博一市長らが28日、町内を回って住民に説明した。

 羽咋川沿いにある両町は液状化による上下水道管の被害が大きく、市が仮設管の工事を進めていた。住民からは「本当にうれしい」と喜ぶ声が上がった。

  ●穴水地区は月内

 穴水町では、穴水地区が1月中、住吉地区は2月中に水道が復旧する見込み。甲、諸橋両地区は3月中のできるだけ早い時期を目指す。

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