能登半島で「井戸水」が支えに 災害時に井戸を活用する取り組み【長島カイセツ・テレビ派】

【動画】【長島カイセツ】災害時に役立つ「井戸」の重要性を考える

広島テレビの長島清隆解説委員が、注目のニュースを分かりやすく分析・説明する「長島カイセツ」です。今回は、災害時の「井戸」の役割についてです。

能登半島地震では、石川県の能登地方を中心に今も断水が続いています。奥能登の珠洲市や輪島市、能登町や穴水町、志賀町、七尾市、さらに羽咋市、内灘町など、4万4145戸で水が出ません。1月21日に石川県は、七尾市では水道の復旧が、4月以降になる見通しを明らかにしました。

そうした中で、あるものの重要性が見直されています。市内全域で断水が起きている石川県七尾市のある建物に「井戸水使えるようになりました。ご自由にどうぞ。」と書かれた紙が貼られています。井戸水が、断水した地域の人たちを一部助けているケースがあります。バケツで汲むのも大変ですが、トイレや掃除などの衛生面を保つためにも貴重です。

■井戸水を汲みに車で来た女性は…

「風呂でもなんでも簡単に(水を)出していたけど、こうなったら毎日トイレ入るのにも、バケツ持って水持って…」

2018年に発生した西日本豪雨では、最も多いときには、広島県内で22万戸が断水し、井戸水が重宝されました。この経験を教訓に、広島県内の自治体の中には、災害時に井戸水を活用できる仕組みを作ったところがあります。その1つ、尾道市を取材しました。

尾道市の常称寺が管理する井戸です。江戸時代の初期から使われていて、今でも現役で水を汲み上げることができます。

■井戸を管理する常称寺住職 川﨑誠さん

「電気とか水道がない時は、ライフラインとして活用できるのではないかと思います。」

尾道市では、6年前の西日本豪雨で、ほぼ全域にあたるおよそ6万世帯が最大2週間に渡り断水し、給水所には長蛇の列ができました。その時、市内に多数ある井戸が解放され、生活用水を求める多くの人が集まりました。

■井戸を管理する常称寺住職 川﨑誠さん

「やっぱり一番がトイレですね。トイレの水はどうしても確保したいということがありますので。簡単なものを洗うのに使う方もいました。」

このことを受けて尾道市が始めたのが、井戸の登録制度『みんなの井戸』です。登録された井戸は、市のホームページや防災マップで公開され、断水時に誰でも無料で使うことができます。

■尾道市環境政策課主事 中市唯さん

「(断水時に)井戸水にたどり着けない、井戸水の情報がなかった方は、生活用水の確保に非常に苦慮されたということも事実としてありました。公共施設は11カ所で、個人宅と事業所は44カ所、合わせて55カ所を現在登録してもらっています。」

西日本豪雨のときに井戸を開放した常称寺も、管理する3つの井戸すべてを登録しました。そのうちの2つはほとんど使っていませんが、故障しないよう定期的に動かしています。

■井戸を管理する常称寺住職 川﨑誠さん

「やっぱりいいことだと思いますよね。災害がいつどこで起こるかわかりませんので、こういうものを残してマップにしていくというのが 市民の安全につながるのではないかと思います。」

『尾道市みんなの井戸』マップは、ホームページから閲覧できます。現在55か所あり、新たに協力してくれる井戸を募集中です。いざというときにはありがたい存在ですが、井戸水は生活用水として、飲み水は給水車などを利用してほしいとのことです。県内では、三次市、東広島市、呉市などでも協力井戸を募集しています。いざというときのために、井戸の役割を改めて見直していきましょう。

【テレビ派 2024年1月26日放送】

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