川崎重工業・橋本社長が語る「ロボット・AI」 注力する分野や、見据える将来像は?

ロボット事業などについて語る川崎重工業の橋本康彦社長=神戸市中央区東川崎町1(撮影・大島光貴)

 川崎重工業(神戸市中央区)が防衛関連事業とともに成長株に位置付けるのが、ロボット事業だ。2030年度の売上高目標は4千億円。23年度に比べ4倍にもなる。橋本康彦社長へのインタビュー後編は「ロボットと人工知能(AI)」。注力する分野や、見据える将来像を聞いた。(石川 翠)

 -医療用検査機器・試薬メーカーのシスメックス(神戸市中央区)とともに設立した医療用ロボットメーカー「メディカロイド」が10周年を迎えた

 「まだまだ道半ばだが、目指した未来に近づいている。手術支援ロボット『ヒノトリ』は3千症例以上、神戸や京都、東京、慶応などの大学病院で使われ、私も最近、周囲の人から『ヒノトリで手術を受けた』と耳にするようになった」

 「一番うれしかったのは、医師とエンジニアといった分野の異なる者同士が連携して開発を成し遂げたことだ。産業用ロボットは危険な場合には停止するが、医師は手術を止められては困る。一方、エンジニアは医師から『感覚的にやりづらい』と言われても、どう反映していいか困ってしまう。分野が異なり、さまざまなギャップがある中で関係を作っていくことはものすごく難しい。しかし、互いに信じ合い、だんだん意思疎通ができるようになった。私の目指す日本の工学の一つの姿だ」

 (ヒノトリの開発について、橋本社長の熱い語りが続く)

 「日本人の持つ真面目さやしっかりした部分は、医療用の精密な機械にこそ生かされるべきだと思っている。工学と医学が一緒になったものを日本から発信し、海外の大資本に負けない、それ以上に価値のあるものを生み出したい。日本のよさを表す一つの典型例が、医療用ロボットではないかと思っている」

 「なぜメディカロイドを競争力のある会社にできたかというと、われわれに産業用ロボットのバックグラウンドがあったから。医療用ロボットで使っている部品や構造の大半は、産業用と同じ。産業用で培った品質管理サービスのネットワークが役に立っている。365日24時間、トラブルに対応できる仕組みがある。この仕組みをゼロからつくるとなると大変だ」

 「今後は、遠隔で細かな縫合をするなどの繊細な医療用ロボットの技術を、産業用に転用できるようにするなど、双方にノウハウや技術を応用していく」 【はしもと・やすひこ】1957年、神戸市須磨区生まれ。西須磨小、灘中高、東大工学部卒。81年川崎重工業入社。一貫してロボット部門(明石工場)に勤務し、2013年執行役員、18年取締役常務執行役員、20年6月現職。社長就任後も時間があると、神戸市長田区のたかとり教会を訪れてミサに参加する。

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