搬送10カ所以上断られ 県内医療機関「ほぼ満床」

  ●金大「ベッド絞り出している」 スタッフを被災地派遣、人手も不足

 能登半島地震による石川県内の病院病床の逼迫(ひっぱく)で、金沢以南の医療現場からは「どうにかベッドを確保している状態」と悲鳴のような声が上がる。被災地や1.5次避難所に医療スタッフを派遣しているため、人手不足に拍車が掛かり、急患の中には10回以上搬送を拒否されたケースもある。関係者は「一生懸命、何とか持ちこたえていきたい」とするが、限界が近づいている。

 「地震前に75%だった病床の稼働率が今は95%。一般病床はもう満床状態だ」。金大附属病院の蒲田敏文病院長は手一杯の現状に危機感を募らせる。

 同病院では830床のうち、精神科や新生児集中治療室(NICU)など一般患者を受け入れていない60床を除く770のベッドを運用。「このベッドはどこの専門とか言ってられない。絞り出している状態。県立中央病院も金沢医科大病院もどこも大変」とやりくりに苦心しているとこぼす。

 冬は脳卒中や心筋梗塞など血管系の病気が発症しやすく通常の急患も多い。そこに地震が発生し、骨折などのけがの治療で来院する人が一気に増えた。通常は高度医療に限定している整形外科で、骨折の手術も引き受けている。

 金大附属病院救急科長の岡島正樹教授によると、10カ所以上の医療機関に断られた末にようやく金大附属病院で受け入れられた人もいた。

 金沢市のいしかわ総合スポーツセンター、県産業展示館など1.5次避難所では金大附属病院、金沢医科大などが専門医を派遣し、避難者の体調に異変がないか診察。人手確保のため、初期研修医のほか、普段は臨床現場で診療しない教授クラスも加わる。1.5次避難所の診療スペースでは10床を「入院患者」に使えるようになったが、岡島教授は「その10床にどこの病院から患者を入れるかの調整に難航するほど現場は困っている」と語る。

 金沢医療センターでは地震後、普段の2倍近くの救急搬送があり、休眠していた病棟を再開して42床増やして対応している。全国の国立病院機構から応援に来た医師1人と看護師16人が交代しながら担当し「ほぼ満床」が続く。阪上学院長は「患者を退院させたくても、療養病床を持つ病院もいっぱいで動きが取りづらい」と嘆く。

 南加賀の各病院も同様の状況だ。

 340床ある小松市民病院の担当者は「今は何とか受け入れているが、満床は近い」とする。能美市立病院は稼働している80床がほぼいっぱいで、担当者は「あと何床残っているかという会議が日課になった」と話している。

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