BMWに“爆弾”を抱えるGTD王者ポール・ミラー。プロクラス初陣で3位も、優勝を逃し「心が痛む」

 ポール・ミラー・レーシングからIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権のGTDプロクラスに参戦するブライアン・セラーズが、シリーズの2024年シーズン開幕戦となったデイトナ24時間レースを振り返り、プロクラスでのデビューウインを逃したことについて「本当に心が痛む」と語った。

 セラーズ、マディソン・スノー、ニール・バーハーゲン、シェルドン・ファン・デル・リンデが駆るポール・ミラー・レーシングのBMW M4 GT3は、今年が62回目の開催となった『ロレックス24・アット・デイトナ(デイトナ24時間レース)』でクラス優勝を飾ったリシ・コンペティツィオーネ(62号車フェラーリ296 GT3)と、クラス2位表彰台を獲得したAOレーシング(77号車ポルシェ911 GT3 R)に次ぐクラス3位入賞を果たした。

 ジョージア州を拠点とするこのチームは、レースが残り2時間を切ったところでブレーキトラブルが発生するまで、つねにGTDプロクラスのトップ3に位置していた。しかし、このトラブルによってAOレーシングのポルシェに2周の差をつけられ、リシ・コンペティツィオーネのフェラーリにはさらにもう1周の差をつけられるかたちでポジションダウンを落とすこととなった。

 リシ・コンペティツィオーネにパスされるまでの間、ポール・ミラーのBMWはレースの大部分をリードしており、セラーズによれば、問題が終盤に発生したことで失望はさらに大きなものとなったという。

 彼はは「本当にタフな出来事だったよ」とSportscar365に語った。「レースが展開するにつれて、『俺たちはやれるんだ。我々はここにいて、戦っている』と実感し、ある瞬間に希望は純粋な欲望に変わるんだ。そのスイッチが入った時、チャンスがあると思ったのに、あのような結末を迎えてしまった」

「僕らにとって、マシンの調子が良く同時に勝てるチャンスが訪れることはそう多くない。それを逃してしまったのが本当に痛いんだ」

「2位や3位でフィニッシュするのは、自分の実力が足りなかったということ。でも、充分な実力を持ちながらそれを逃した日は、取り戻したいと思ってしまうね」

優勝したリシ・コンペティツィオーネのメンバー(左)と3位でフィニッシュしたポール・ミラー・レーシングのドライバーたち。(左から)ブライアン・セラーズ、マディソン・スノー、シェルドン・ファン・デル・リンデ、ニール・バーハーゲン

■ロングレースで続くブレーキ問題に困惑するセラーズ「問題を抱えたままではいられない」

 前述のとおり、ポール・ミラーのM4 GT3は、BMWのファクトリードライバーであるファン・デル・リンデがドライブしていたレース終盤のスティントにおいて発生したトラブルが、デビュー戦での優勝を遠ざけることになってしまった。

 このことについてセラーズは「熱による問題がブレーキにあったんだ」と話す。

「レースが残り3時間半になった頃、シェルドン(・ファン・デル・リンデ)がステアリングを握るとペダルのストロークが少し長くなっていた。ドライバー交代は、彼を少し休ませるためにやったんだ」

「この長丁場の戦いのなかで、ブレーキパッドは完全にダメになっていた。右フロントに至っては完全に残りがなくなってしまったんだよ」

「問題は、摩材がなくなると同時に熱でローターが壊れてしまったことだ。このような失敗は、今までの経験のなかでも見たことがないよ」

 ファン・デル・リンデはSportscar365に対し、インフィールドセクションで芝の上に飛び出した際、ブレーキ交換後にステアリングが故障したのかと思ったと明かした。

「交換を終えてコースに戻った時、フロントに違和感があった。そこでマシンを左右にウィービングさせてみたんだけど、ステアリングに何も反応がなかったんだ。だから、ステアリングコラムか何かが壊れたと思ったんだ」

「結局ブレーキがおかしいことがわかった。それが何だったのかはわからないけどね。そしてABS(アンチロック・ブレーキ・システム)の故障もあった」

「最後の2時間はABSなしで走っていたよ。ターン3への進入ではスモークがすごかったと思うけど、表彰台のためには必要なことだった」

 ポール・ミラー・レーシングではマシンをM4 GT3にスイッチして以来、長距離レースでのブレーキトラブルに悩まされてきた。2023年のセブリング12時間でGTDクラス優勝を飾ったときもそうだ。セラーズは、ミシュラン・エンデュランス・カップのレースでブレーキに問題があることは、チームにとって解決しなければならないことだと指摘する。

「我々にとっては既知の問題だ。原因は未だにわかっていないけどね」とセラーズ。

「もし我々が推奨されたものに忠実でなかったら、容易に説明がつくだろう? もし自分たちで別のコンパウンドを使用していたとしたら? でも実際はそうじゃない」

「混乱するし、解決しなければならないことだ。長いレースでブレーキに問題を抱えたままではいられないからね。かなり重要なことだよ」

2024年IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権の開幕戦デイトナ24時間でGTDプロクラス3位となったポール・ミラー・レーシングの1号車BMW M4 GT3

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