霊長類の中で人間だけ白目がある理由は? デジタル社会を生き抜くヒントになるかも

京都市動物園のゴリラ。確かに白目はない

 京都政経文化懇話会の1月例会が15日、京都市上京区のホテルで開かれ、ゴリラ研究の第一人者で総合地球環境学研究所の山極寿一所長が「デジタル社会を生き抜くために」と題して講演した。人間の「共感する力」やコミュニケーションの特徴について、ゴリラやサルとの比較を通じて説明し、普及が予想されるデジタル仮想空間との向き合い方を語った。

 山極さんは霊長類学の視点で人類の進化をひもとき、人間は共同の子育てなどで共感する力をはぐくんできたと説明。「言葉を獲得する以前も、歌など音楽的なコミュニケーションを通じて共感し、共同体を強くしてきた」と語った。

 霊長類の中で、人間の目にだけ白目があることも解説。「白目があるから目の微細な動きを捉え、相手の気持ちを察することができる。そこで共感力を駆使し、言葉を有効なコミュニケーションにしている」と話した。

 デジタル技術を活用した仮想空間「メタバース」については、「空想の社会の中で積極的に物語をつくるという点で、現実を補完する目的だった従来の仮想現実とは異なる」と指摘。「その中で生まれた新たな倫理や道徳が、現代社会に跳ね返ってくる危険性がある。人工知能が情報化できない感情や身体の意味を考え、(メタバースを)賢く使わないといけない」と語った。

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