教員不足でなりふり構わず「青田買い」 志望者減で大学3年生でも受験OKに 京都

京都市役所

 京都市教育委員会は2024年度実施の採用試験から、教員免許取得予定の大学3年生にも受験資格を広げることに決めた。全国的な教員志願者の減少を受けた要件緩和で、優秀な教員志望者を「青田買い」するのが狙いだ。合格者には教員志望者向けに開設する「先生塾」の受講料を無料にする特典も付与する。教員不足により「先生争奪戦」が繰り広げられる中、市教委の策は実を結ぶのか。

■3年生で合格すればメリット多く

 市教委によると、志願者は2013年度実施試験で2199人いたが、本年度は1385人に減少。倍率も1990年度以降でピークだった95年度の16倍(採用者比)から本年度は5倍(合格者比)に低下した。全国的にも同様で、各教育委員会は優秀な先生の確保に知恵を絞っている。

 そこで京都市教委は優秀な人材を1年前に確保してしまおうと、24年度実施の採用試験(25年度採用)1次筆記試験の「一般・教職教養」「専門」で、大学3年生の受験も認めることにした。3年生で1次筆記試験を通過しても2次試験には進めず、内定は得られないが、4年生になった翌年度の1次筆記試験が免除される。また市教委が開く教員志願者向け講座「京都教師塾」の受講料(1万円)も無料となり、月2~3回、経験豊かな教員から直接指導が受けられ、実践的な能力を身に付けられる。

■3年生合格者への手厚いフォローの目的は

 市教委は、優秀な学生を先に合格させておくことで、民間企業に志望を変更したり、他都市の教員採用試験を受ける学生を抑制できると見込む。また学生側も3年生で筆記試験に合格しておけば、1年後の2次試験に出題される模擬授業などのスキル向上に重点的に取り組めるメリットがある。全国でも東京都など16の教育委員会が3年生の受験を認めているという。

 市教委教職員人事課は「内定者のうち教師塾受講者は3割に達している。京都で教師をしたいという学生の受験機会を増やし、スキルアップを目指す熱意に応えたい」としている。

■優秀な人材を推薦した大学には「ボーナス」加配も

 また市教委は24年度実施の採用試験から大学・大学院推薦制度の受験枠を拡充する方針も固めた。推薦制度の受験者に採用者が出た学校には翌年度の推薦枠を「ボーナス」として加配する。推薦枠で受験した学生の合格率は一般枠に比べて高く、大学側にとっても学生集めに有利に働くという利点もある。

■「青田買い」の効果は

 バブル期では、優秀な学生を確保しようとの企業による空前の「青田買い」が行われた。早々と内定を出し、ライバル企業の採用試験を受けさせないよう、豪華ホテルに「軟禁」するなどの手法もとられた。激務の教員を敬遠する学生が多くなる中、優秀な先生が欲しいのは全国どの教育委員会も同じ。京都市教委は「京都市で先生がしたい、という意欲ある学生をつなぎとめたい」としており、熱意ある学生にメリットを示すことができるか。給与などの待遇面だけではなく、学生の意欲にマッチした働き方を提示できるかもポイントになる。

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