ごみ収集車がピットに転落し運転手が死亡 荷台からごみが出てこなかったか 同じクリーンセンターでは過去にも事故 なぜ繰り返されるのか―

愛媛県松山市の南クリーンセンターで、ごみ収集車がピットに転落し、運転手の男性が死亡しました。このセンターでは、22年前にも転落事故が起きています。なぜ事故は繰り返されたのか―、そして取材で見えてきた課題とは。

去年10月、松山市の南クリーンセンターで、ごみを捨てるピットに収集車が転落し、運転していた男性(当時41)が死亡しました。運転席の屋根ははがれ、ごみ収集車は大きく損傷していました。収集車は、荷台を傾けてごみを排出しようして転落したと見られています。

ピットの深さは約9m。中にごみが積み上がっていたため、収集車は5mほど下のごみの上に後ろの部分から転落、横転したということです。

収集車は、ごみを鉄板で押し出して排出するタイプと、荷台を傾けてごみを排出するダンプ式などがあります。ダンプ式の方が価格が安いことなどを背景に産廃業者の収集車はこのダンプ式が多く、今回転落したのもこのタイプでした。

日ごろ、ダンプ式の収集車で松山南クリーセンターにごみを持ち込んでいる産廃業者は、次のように話します。

産廃業者
「ごみ収集車は普通のダンプやトラックに比べて重量が重たいんです。当然、荷台を上げた状態で動くと、不安定になって転倒は起こりうるんですけど、それが起こらないように、ちゃんと止まった状態でゆっくり操作をして荷物を降ろすのが通常のやり方。よっぽどの何らかの不安定な要素があったがために、そういうことが起こったんだと思う」

転落した収集車は、ピットの手前の車止めまでバックし、ごみを捨てようとしましたが、荷台からごみが出てこない状況で事故が起きたと見られています。

松山市は、ごみが排出できない場合は、無理に出そうとせず、車を別の場所に移動させごみを取り出すよう業者に呼びかけていました。

あるメーカーの取り扱い説明書には『ごみを排出しにくい場合、荷台を急に上げたり、上げ下げを細かく繰り返したりすると、バランスが崩れ重大な事故のおそれがある』と警告しています。

今回の転落事故の原因は、捜査中のため明らかになっていませんが、松山南クリーンセンターでは2002年にもごみ収集車がピットに転落し、作業員がケガをする事故が起きています。松山市はこの事故について、荷台のごみが詰まったにも関わらず、安全な場所で取り出す対応が取られていなかったとしています。

産廃業者は、ごみ収集を取り巻く環境を次のように指摘します。

産廃業者
「受け持ちエリアを回るので、回るエリアがどんどん遅れていく。そうすると精神的に追い込まれていく。ここまで行っておいたら、みたいな感じで過積載が起こるということもあります」

ごみの収集は、委託された業者ごとに担当する地区が割り振られていますが、ごみの量や道路状況などによって、作業にかかる時間が大きく変わります。その上、松山南クリーンセンターは、一般の人が家庭ごみを持ちこむことができ、ごみ収集車も同じ列に並びます。今回の事故が起きたのは、祝日の午後3時過ぎで、混雑していたと見られます。

松山南クリーンセンターは利用開始から30年が経過し、建て替えが予定されていて、市は安全対策について検討中と説明しています。

一方、2013年から稼働している松山西クリーンセンターでは、万が一、収集車が転落しそうになっても、途中で引っかかるように約57トンの重さまで耐えることができる梁が設けられています。さらに、人が転落した場合に備え、救出用の「ゴンドラ」が備えてあります。

このほか、新居浜市と西条市のセンターでは、ピットへの転落を防ぐためごみ収集車をベルトで床に固定して作業を行う対策がとられていました。

同じ施設で繰り返された事故。警察と労働基準監督署が、収集車が転落した原因や安全管理に問題がなかったか調べています。

© 株式会社あいテレビ