臭い抑える仮設トイレ 避難所で稼働、好評

悪臭を抑える仮設トイレを避難所に設置した廣瀬氏(右)=珠洲市三崎中

  ●「イグ・ノーベル賞」廣瀬金大名誉教授、大阪の企業と開発 殺菌効果、ストレス軽減

 ユニークな研究に贈られる「イグ・ノーベル賞」の受賞者である廣瀬幸雄金大名誉教授(破壊工学)が大阪の企業と共同で開発した「臭わない仮設トイレ」が、能登半島地震の避難所で計53台稼働している。約400度の高温蒸気を吹き付けることで排せつ物を殺菌し、臭いを抑える効果が期待され、珠洲や輪島などの被災者に喜ばれている。

 廣瀬名誉教授が「無臭トイレ」の研究を始めたのは十数年前にさかのぼる。過熱蒸気を使ったコーヒーの焙煎(ばいせん)機を開発する過程で、高温の蒸気が窒素や硫黄などの嫌な臭いの成分を抑える作用があることに気付いた。試作した仮設トイレは東日本大震災で岩手県陸前高田市の避難所に持ち込み、活用された。

 能登の避難所に設置したのは、インプルーブエナジー(大阪市)と2年前から共同開発を進めた仮設トイレ。コロナ禍で排せつ物を通じた感染拡大を防ぐ効果にも注目した。昨年8月に大阪で音楽イベント会場に53台を設置、3日間で約3万人が連続使用し、臭いがないと好評だったという。

 廣瀬名誉教授と同社、地元の協力者は能登の自治体に問い合わせ、10日から被災地に入り、珠洲市三崎中の3台を皮切りに、輪島や七尾、穴水の避難所を何度も往復しながら53台をボランティアで設置した。福岡のアイスショーで使った10台も七尾の避難所に追加する。

 現地では、特に女性から「食事よりトイレが大事」との声を聞き、温水洗浄機能や便座のヒーター機能も喜ばれたという。臭いが気にならないことで、トイレ内に暖房器具を設置でき、寒さ対策にもなる。

 廣瀬名誉教授は被災地の作業員らに過熱焙煎コーヒーも振る舞った。「今年で83歳。『町のエジソン』としてさまざまな研究に取り組んできた。避難所生活の負担が少しでも軽減されるよう、お役に立てればうれしい」と話した。

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