地震で揺れる真宗王国 七尾で被災、勤めできず

本堂で落下した欄間や仏具=七尾市鵜浦町の法広寺

  ●城端別院善徳寺の亀渕輪番、自坊損壊

 真宗大谷派城端別院善徳寺(南砺市城端)の亀渕卓(まさる)輪番(70)は能登半島地震で、住職を務める七尾市鵜浦町の法広寺が被災し、本格的に勤めをできない状況が続いている。法広寺はいたるところが損壊し、水道も断水状態のまま。亀渕輪番は復旧作業と並行して2月6日から善徳寺のお勤めを再開するが、「当面は週に1、2泊して七尾に戻る生活になる」と語る。地震は信仰の厚い北陸の真宗王国も揺るがしている。

 昨年まで、亀渕輪番は平日は善徳寺内の輪番専用の部屋に宿泊して執務に当たり、土、日曜に法広寺に帰っていた。

 元日は善徳寺で午前1時からお勤め、年頭のあいさつを行った後、同3時に七尾に帰った。地震発生時は帰省中の長男、妻と過ごしていた。2人は外に逃げ出したが、台所にいた亀渕輪番は激しい揺れで身動きできず、気が付いたら食器棚にしがみついていた。

 津波の危険を感じ、家族で旧中学校の体育館に一時避難した。避難中に善徳寺の石村宗明寺務長(73)から携帯電話に安否確認の連絡があり、無事を伝えた。

 揺れが落ち着き、法広寺に戻ると石垣は崩れ、墓石の7割は倒れていた。地面に亀裂が入って15センチずれ、鐘楼堂の柱も礎石からずれて倒壊寸前だった。本堂の仏具や欄間は落下したが、本尊の阿弥陀如来像は無事で胸をなで下ろした。

 停電はしなかったものの水道は断水のままで、今も風呂やトイレは使えない。5日に能越自動車道の封鎖が解除されたため、現在は週に1回程度、善徳寺を訪れ、石村寺務長から業務報告を受けている。

 石村寺務長は「片付けや水を届けることを提案したが、輪番は『大丈夫』との返事だった。心身とも元気になることを願い、支援準備を進めたい」と話す。

 亀渕輪番は「善徳寺に来ると私もほっとする。法広寺の復旧は雪解け後になる。輪番の務めを少しずつ果たしたい」と気丈に話した。

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