行方不明の認知症高齢者、タグで「今ココ」 GPSと併用、早期発見へ見守りネットワーク拡大 市が実証実験

見守りサービスで認知症の高齢者らが身に付けるビーコンタグ(右)と固定機器=三田市役所

 行方が分からなくなった認知症高齢者らの早期発見につなげようと、兵庫県三田市が専用タグを利用した捜索サービスの実証実験に取り組んでいる。スマートフォン向けアプリなどと連携し、新たな見守りのネットワークをつくる。衛星利用測位システム(GPS)を使った従来型も併用し、実効性を高める。(橋本 薫)

 市内では、店舗を訪れた認知症の人が自宅への帰り道を忘れたり、家族が就寝中に外出したりして保護されるケースが発生している。現在、認知症か認知機能が著しく衰えている高齢者らは2789人と推計されている。さらなる高齢化の進展で2030年に3439人、40年には4726人に上るとされる=グラフ。

 市は、介護保険の認定を受けているなどの要件を満たせば、GPS端末を無償で貸与している。認知症の高齢者らが行方不明になると、家族はスマホアプリで居場所を確認し、発見につなげている。現在は70人に貸与しているが、2週間に1回程度の充電が必要など課題があるという。

 そこで、近距離無線通信「ブルートゥース」の技術を使ったビーコンタグ(発信器)による見守りサービスの実証実験を始めた。綜合警備保障(ALSOK)の機器を活用。タグは縦最大2.8センチ、横5.6センチ、厚さ1センチと小型で、見守りが必要な人が身に付けて携帯しやすい。ボタン電池で約1年間は作動する。

 位置情報の検知には、先行して見守りサービスに取り組む同県加古川市が開発したアプリを使う。アプリをインストールしたスマホが検知器となり、タグを携帯した人が近くに通ると反応する仕組みで、実験では市職員や地域包括支援センターの職員に参加してもらう。加古川市でアプリを入れている人が三田市に来た場合も検知に協力できる。また、対象者の自宅や市民センターなどの公共施設には固定の検知機器を設置する。

 実験には60~90代の認知症高齢者ら8人が参加し、参加者を増やしながら12月ごろまで続ける。アンケートで課題を探り、25年度の実装を目指す。

 市いきいき高齢者支援課の久後秀樹課長は「GPSも併用して見守りの網を広げ、安心感を高めてもらいたい。市民の理解が進むきっかけにもなれば」と話している。

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