罪を犯した人の社会復帰に向けた態勢を整え、再犯を防ごうと、兵庫県尼崎市と神戸保護観察所、尼崎市保護司会が31日、情報共有を核とした全国初の連携協定を締結した。犯罪の背景には貧困や虐待、依存症など複数の問題が絡み合っている場合も多く、成育歴や家族の状況、障害、犯歴などを共有することで切れ目のない支援につなげる。
尼崎市は2022年4月、さまざまな困難を抱えた人を部局横断的に支える「重層的支援担当」を新設し、相談内容などの情報を一元化。2カ月に1度、保護司や保護観察官を交えて再犯防止に向けた会議を開き、神戸地検や法務省大阪矯正管区の担当者や弁護士も参加するようになった。
実際に、幼い頃からネグレクト状態で再犯を繰り返し、受刑中に軽度知的障害が判明した男性に対して、市の障害者支援担当が出所前からオンライン面談を実施。地域保健や生活保護などの担当者と支援プランを準備しつつ、弁護士や保護司、刑務所福祉専門官らと親族側にもアプローチを重ねた結果、男性は出所と同時に医療や支援機関につながることができた-といった成果もあったという。
検挙者に占める再犯者の割合が上昇傾向にある中、23年12月には改正更生保護法が施行。国も地域での支援を強化しており、同観察所は福祉サービスや教育などを担う市と、より恒常的に密接な連携が取れるよう協定を結ぶことにした。個人情報の共有について取り扱いを明文化し、再犯防止に向けた包括的な支援体制の構築、高齢化が進む保護司の人員確保などで協力していく。
尼崎市の松本真市長は「再犯防止にはあらゆる機関が協力することが重要。保護観察終了後も見据え、息の長い支援をしたい」とした。(広畑千春)