米大統領選挙、春闘…、株式相場に影響を及ぼす可能性のある2024年の重要イベント

時が経つのは早いもの。年が明けてからすでにひと月が経とうとしています。すでに成人式や大学共通テストという大事なイベントを終え、新たな人生への旅路を前に身を引き締めている方もいることでしょう。

長期投資を主眼に置く投資家にとって、1つ1つのイベントはそこまで重要ではないかもしれませんが、1つの出来事が長期に渡って影響を及ぼしかねないのが株式投資の世界です。今回は、やや遅ればせながらではありますが、株式相場や経済動向にとって2024年に予定されている注目すべき「国内外のイベント」を紹介します。


米国の大統領選に向けた動きは要チェック!

まず、目先で注目すべきと思われるイベントが、3月5日に開催を予定している、米大統領選挙に向けた予備選や党員集会の集中日、いわゆる「スーパーチューズデー」。今のところ、民主党は現職のバイデン大統領、共和党は前大統領のトランプ氏がそれぞれ各党の有力候補と目されています。

基本的に、米大統領選は現職中、集票に有利な政策を実行することができるため、現職が有利。第二次世界大戦以降では、現職として出馬し、再選を果たせなかったのはわずか3人(ジェラルド・フォード、ジミー・カーター、ジョージ・ブッシュ・シニア)のみです。その点では、現職のバイデン大統領が有利と言えるかもしれません。もっとも、バイデン大統領は物価高やイスラエルとパレスチナ自治区の紛争への対応、高齢(81歳)問題などが国民の不安や不信につながっていて、支持率は低迷しています。また、民主党内でもバイデン大統領再選に向けた不安が広がっているもようで、トランプ大統領が付け入る隙は十分にありそうです。むしろ、現状ではトランプ氏の復職を予想する声が少なくありません。

ただし、米国の大統領選挙(本選)は11月5日とまだ日があるため、刻一刻と状況が変わる可能性はあります。3月5日のスーパーチューズデーの結果次第では共和党の大統領候補がトランプ氏に決定する公算があるため、結果くらいは簡単にチェックしておくべきでしょう。

なぜ、2024年の米大統領選挙に注目すべきなのでしょうか。もちろん、米国が依然として世界一の経済大国であり、世界の景気動向に大きな影響を持つという前提はあります。それに加え、仮にトランプ氏が大統領の座に返り咲いた場合、前職中に行っていた「移民排斥」や、貿易関税の引き上げなどの「ブロック経済」による米中摩擦の増加、大規模な財政出動などによってインフレ懸念の再来や景気悪化などにつながる恐れが指摘されています。また、世界の気候変動問題に関する国際的な枠組み「パリ協定」からの脱退、それにともなう独自の環境対策の実施といった個別の案件も見逃せません。

もちろん、トランプ氏が前職時、前面に押し出していた「アメリカファースト」の旗を“やや”下げる可能性はあります。また、トランプ氏の目前には複数の刑事事件の初公判が控えており、裁判の動向によっては大統領選挙の状況が大きく変わるかもしれません。いま言えるのは、現在はバイデン大統領再選とトランプ氏復帰のシナリオをそれぞれ描いておくべきということです。

春闘の結果次第では「円高・ドル安」が進行も

国内のイベントとして注目しておきたいのが、3月末までに行われる「春闘」です。春闘とは、労働組合が毎年2月~3月に行う、企業との賃上げ交渉のこと。すでに、トヨタ自動車やホンダなど一部の大企業で春闘がスタートしたことが話題になっています。今のところ、2024年の春闘の賃上げ率は前年の数字(3.60%)を若干上回るとの予想が目立ちますが、大企業の賃上げが中小企業までどの程度波及するかがカギとなりそうです。

実は、2024年の春闘について、経済界や金融業界の注目が例年以上に集まっています。その理由は、春闘の結果次第で日銀が20年以上に渡って続けてきた「ゼロ金利政策」の解除に動く可能性があるため。植田和男・日銀総裁は、2023年4月に総裁に就任して以来、ゼロ金利政策を解除するための主な条件に「物価の安定(物価高の収束)」と「賃金の上昇」を掲げています。

物価高については、今後は徐々に収束することが予想されています。それだけに、今回の春闘で前年を上回る水準で賃金が上昇すれば、4月の25日、26日に渡って開かれる予定「日銀金融政策決定会合」で、金融史の歴史に名を刻む「ゼロ金利の解除」が行われる可能性が高まるでしょう。春闘の内容が報道されるにつれ、株式市場や為替市場もゼロ金利解除を織り込む形で推移していくことが予想されます。

現在、米国がいつ利下げに転じるかが話題となっています。米国が利下げ、日本がゼロ金利解除(≒利上げ)となれば、両国の金利差の縮小によって、為替は「円高・ドル安」が進む可能性が高いでしょう。ゼロ金利解除については、同コラム「知っておきたい日銀の『ゼロ金利政策』」で少し詳しく触れていますので、気になる方はチェックしてみてください。

注目イベントが目白押し!

ここからは、やや駆け足でその他の注目イベントを紹介しましょう。まず、3月30日(土)に東京・お台場ビッグサイト周辺で開催を予定しているFE(フォーミュライー)レース。日本で初めて公道で行われるビッグレースとして、国内外の注目が集まっています。同レースは、同じカーレースのF1(フォーミュラワン)と比べると注目度は下がりますが、FEは現在のEV(電気自動車)の最先端技術が結集したFEカーを公開する場。そのため、EV関連企業の耳目がギュッと集まるレースです。1月24日、EV世界大手のテスラの決算が不調に終わったことで、EV市場の目先の動向を心配する声が上がっていますが、EV市場の将来的な拡大は必至の情勢です。お台場でFEレースが開催されることで、国内のEV市場に熱視線が注がれるきっかけの1つになることは確かでしょう。

個人的に注目しているのが、3月中に京都宇治市で開業を予定している「ニンテンドーミュージアム」。ゲーム大手の任天堂が過去の歴代ハードやソフトなどを展示する博物館です。一個の博物館に注目する理由は、現在、「任天堂の次世代ハード機に関する具体的な情報」が待ち望まれているため。現行ハード機のNintendo Switch(ニンテンドースイッチ)が2017年に発売されてからすでに7年が経過していて、ゲーム愛好家からは「そろそろ次世代機について具体的な内容が出てきても…」との声が上がっています。その情報がニンテンドーミュージアム開業に合わせて出てきても不思議はありません。次世代ハードの出来次第な側面はあるものの、それがゲーム業界に大きな一石を投じる可能性はあります。ゲーム関連株は個人投資家の注目度が高く、2024年に起こり得るイベントとして注目しておきたいところです。

ニンテンドーミュージアムに加え、「ヒルトン京都」を中心に外資系の有名ホテルが次々と京都で開業を予定していることも要チェックでしょう。京都は日本を代表する観光地として知られているのは周知の通り。有名ホテルの開業によって、一段とインバウンド需要が盛り上がることが予想されます。また、6月6日には東京ディズニーシーに新エリア「ファンタジースプリングス」がグランドオープンする予定です。おそらく、同園は国内外の観光客で大賑わいとなるでしょう。

そのほか、中国の春節(2月10日~17日)と全国人民代表大会(全人代、3月5日)、フランスの「夏季オリンピック・パラリンピック」(7月26日~8月11日)、日本の自民党総裁選(9月)、台湾半導体大手TSMCの熊本第一工場の稼働(12月、第二工場と第三工場の動向含む)、ビットコイン半減期(3月~4月頃)なども注目すべきイベントとして挙げられます。


今回は2024年の注目イベントをざっくりと紹介してきました。株式投資は、こうしたイベントからどんな注目テーマが生まれ、どんな銘柄が人気化するのかを予想する「連想ゲーム」でもあり、それを株式投資の醍醐味として挙げる投資家が少なくありません。試しに、会社帰りの電車の中や寝る前、休日のうちの1時間でも連想ゲームに興じてみてはいかがでしょうか。

参考
第一生命経済研究所「春闘賃上げ率の見通し(改定版)」
日本総研「米国経済、トランプ再選で高インフレ・低成長も」

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