節分何まく?地域に差、岩手は・・・  全国10道県地方紙アンケート

 

 2月3日、あなたは何をまきますか―。岩手日報社の特命取材班など読者とつながる報道に取り組む全国10道県の地方紙は、節分に関する合同アンケートを実施した。もともと「五穀」の一つでもあることなどから大豆をまくのが一般的だが、寄せられた回答では落花生が多数派。地域による違いが改めて浮き彫りになった。

 アンケートは▽北海道▽河北新報(宮城県)▽下野(栃木県)▽上毛(群馬県)▽信濃毎日(長野県)▽西日本(福岡県)▽熊本日日▽宮崎日日▽南日本(鹿児島県)―の各紙と実施。通信アプリLINE(ライン)などで呼びかけ2389人が回答した。

 「節分でまくもの」(複数回答)は落花生(62.2%)と大豆(49.3%)が双璧をなし、あめ(4.1%)、小豆(1.2%)の順だった。

 岩手県と宮城では7割超が「落花生のみ」と回答。北海道や長野、九州南部は5~6割だった。一方、北関東では「大豆のみ」が目立ち、栃木では8割近く、群馬は6割以上に。九州北部の福岡でもほぼ半数を占めた。

 豆を緑茶に入れる「福茶」を飲む(群馬)、あめを落花生と一緒にまく(宮崎)―など、寄せられた各地の風習にもさまざまな違いがあった。

 節分は中国の風習を導入した宮廷行事が源流で、災厄をはらう儀式が鬼役を追い出す内容に変化したとされる。室町時代の文献には、市中でも豆まきが行われ「鬼は外、福は内」と唱える様子が記録されている。

 かけ声についても質問したところ、9割以上が「鬼は外、福は内」。ただ60代以上では「福は内」とだけ言うなど〝定番〟とは異なる言い方が比較的多く見られた。長野では、最後に「ごもっとも」と付けるという人も少なくなかった。

 アンケートは多様な声を聞き取るのが目的で、無作為抽出で民意を把握する世論調査とは異なる。

「落花生派」戦後に拡大 背景に衛生面や利便性

 地方紙10紙が実施した節分アンケートで多勢を占めた「落花生派」。専門家によると、落花生は戦後に一部地域で利用され始めた。殻があるため片付けやすく、衛生面の利点などを背景に広まったとみられる。

 節分文化に詳しい北海道博物館(札幌市)の学芸部長、池田貴夫さん(53)によると、落花生をまく主な都道府県や地域は、北海道▽東北▽新潟▽長野県北部▽熊本▽宮崎▽鹿児島―といい、アンケートの結果とほぼ一致した。

 池田さんは25年にわたり全国で聞き取りや古い新聞記事を基に調査。最も早く落花生がまかれたのは昭和20年代後半ごろの北海道や新潟という。40年代には東北の新聞が落花生を「今はやり」と紹介。同時期には南九州の百貨店では節分時期の売り上げが大豆を上回ったと報じられており、地域の拡大がうかがえる。

 ただ、なぜ利用が始まったのかは判然としない。池田さんは「『降雪地帯では外にまいても(埋もれずに)食べやすい』との説があるが、九州南部では説明がつかない」と首をひねる。

 池田さんによる店頭などでの聞き取りによると、落花生をまく主な理由は▽片付けやすい▽衛生的▽味が良い―の3点。今回のアンケートでは特に女性から「投げてもめったなことでは割れない」「拾い集めるのが楽」との意見が相次いだ。

野菜や福引券もまかれた節分行事を伝える1970年の岩手日報。「豆まき」は世相も反映している

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