琴ノ若関、努力と感謝でてっぺんへ 尾花沢の家族「よくここまで」

琴ノ若関と撮影した写真を手に、大関昇進を喜ぶ今野芳夫さん(右)、とき子さん=尾花沢市

 「立派な息子、それ以上の孫を持つことができて幸せだ」。佐渡ケ嶽親方の両親の今野芳夫さん(87)、とき子さん(85)は、尾花沢市内の自宅で琴ノ若関(26)の大関昇進伝達式のインターネット中継を見守った。手をたたき、画面越しに「おめでとう」と祝福したとき子さん。琴ノ若関が口上を述べると、芳夫さんは目尻を拭った。「よくここまでなった」と、息子である親方を超えた孫の昇進に感慨もひとしおだ。

 親方からは、琴ノ若関が早朝や取組の後、黙々と稽古に励んでいると聞いていたという。芳夫さんは「今の相撲を磨いていけば、優勝、横綱も見えてくるはず」と期待を込める。「本人の努力はもちろん、みんなのおかげで昇進できた」と、琴ノ若関と同様に周囲への感謝を口にしたとき子さん。「かっちゃん」と呼ぶ孫へ、「けがをしないで、頑張って」とエールを送った。

 佐渡ケ嶽親方の兄・今野浩幸さん(60)=尾花沢市若葉町3丁目=は、前日に電話で親方に「おめでとう」と直接伝えたという。琴ノ若関が口上で「感謝」を口にしたことについて、「県民や市民が郷土力士として応援していることに感謝しなければならないと伝えてきた。親方の教えでもあり、素直に受け止めてくれていることがうれしい」と喜んだ。

 3月の春場所を「琴ノ若」のまま臨むことについては「親方への恩返しの気持ちがよく表れた選択だと思う。感動した」と今野さん。「これまでと変わらず目の前の一番に全身全霊を懸けて臨めるかが大切。けがなく、稽古の成果を出し続ければ結果はついてくる」と、角界の看板を背負うことになるおいっ子を激励した。

「来場所はV」「『横綱・琴桜』見たい」県民の声

 大関昇進を知った県民からは、喜びの声が相次いだ。次は番付最高位へ―。角界の“サラブレッド”への期待は高まるばかりだ。

 天童市東久野本3丁目、会社員山本祐希さん(25)は「大関昇進は県民にとってとてもうれしい出来事だ」と声を弾ませ、「来場所では初優勝を目指して頑張ってほしい」とエールを送った。長井市九野本、無職梅津優太さん(19)は「頂点に次ぐ地位に昇り詰めるまでには相当な努力をしたはずだ」と思いを巡らせ、口上については「自分の言葉で誓っていて好感が持てた」と話した。西川町月岡の団体職員宮林優来(ゆら)さん(20)は「口上で用いた感謝という言葉に人柄の良さを感じた。同じ20代として尊敬できるし、最高位を目指してほしい」と目を輝かせた。

 初場所の取り組みは欠かさず見ていたという南陽市萩生田、工芸家川合ひさ子さん(74)は、「山形県民としては琴ノ若に親しみがあるが、琴桜を襲名してほしい気持ちもある」と話した。酒田市郡山、無職荘司賢悟さん(81)は「山形の相撲ファンとして、ゆかりのある力士の飛躍はうれしい。琴ノ若として来場所で優勝し、横綱・琴桜を早く見たい」と期待を膨らませた。

 吉村美栄子知事は1月31日の定例記者会見で「力強い相撲に、県民は勇気と感動をもらった。お祝いを申し上げ、今後のますますの活躍を期待している」と語った。

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