決算翌日に株価は急上昇、赤字企業「マネーフォワード」が好調の要因は?

「家計管理は何でされていますか?」

5年くらい前からセミナーで参加者の方によく聞く質問です。キャッシュレスの浸透度と比例して、家計簿アプリなどデジタルで管理する人の割合が高まりつつあります。わたしは15年ほど前から家計簿をつけていましたが、8年ほど前からデジタル家計簿に移行しました。そのきっかけはマネーフォワードMEに出会ったことです。それまでも簡易型の家計簿アプリは使用したことがありましたが、いまいちピンときませんでした。

ところがマネーフォワードME(当時はまだマネーフォワードという名称でした)は、それまでの家計簿アプリではなかった、フロー(月々の収入&支出)とストック(預金、株式、投資信託などの資産状況)の両方が一括管理できる画期的なものでした。最初は無料ユーザーでしたが、すぐにプレミアムサービスユーザーに。プレミアムといっても月額500円というお値打ち価格。登録しているクレジットカードで支払いすれば、自動的に支出は記録されるので、アナログ家計簿のように記入漏れなどありません。

わたしの場合は、細かい日々のお金の出入りよりも、資産管理を重視しています。そのためのツールとしてマネーフォワードMEは最適です。


株価の上昇率ランキング上位にランクイン

ユーザーとしては高く評価しているサービスですが、投資家としては肩入れできませんでした。なぜなら赤字企業だからです。わたしが投資対象とするのは、売上、営業利益がともに安定して拡大していること。マネーフォワードは、売上は毎年30%以上伸びていますが、営業利益は毎年赤字です。もちろん今は先行投資でシェアを拡大し、売上の伸びを重視していくべきステージだと理解はしています。コロナ禍では、マネーフォワードのようなIT企業の評価が一気に高まり、赤字であっても株価が5倍近く上昇したのも横目で見ていました。そんな波に乗れなかった悔しさもありつつ、それでもやはり上場企業は利益を出してなんぼ、との固定概念を拭い去ることができません。

しかし、先日2023年11月期の本決算発表翌日、株価は15.6%上昇! いわゆるハイテクグロース株と言われる銘柄の株価の低迷が続いている中、久々にこの類の銘柄が上昇率ランキング上位に顔を出しました。いったいどのような決算内容だったのでしょう?

まずは着地の数字を見てみましょう。

画像:マネーフォワード「2023年11月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

1月12日に発表された2023年11月期の①売上高は30,380(百万円)、②前年比41.5%、③SaaS ARR 23,146(百万円)、④前年比42.0%、⑤EBITDA△2,260(百万円)、⑥営業利益△6,329(百万円)。

”SaaS ARR”というのは、各期末時点におけるSaaSビジネス(マネーフォワードの場合はBusinessドメイン、Homeドメイン、Xドメイン、Financeドメイン)の年間ストック売上を表します。いわゆるサブスク型ビジネスでは、契約数が伸びれば売上も積み上がるので、この数字がとても重視されます。

”EBITDA”は、営業利益に償却費、営業費用に含まれる税金、株式報酬を足したもので、この数字をあえて表記している理由は、本業の実力とは関係ない費用(減価償却費、のれん償却費、株式報酬費用)が、営業利益を圧迫していることを目立たせたいためだと考えられます。要は、営業利益の変化ではなく、EBITDAの変化を見てほしいということです。たしかに営業利益の赤字幅の減少率は25%程度ですが、EBITDAの減少率は63%と大きく改善されています。

第二四半期のタイミングで、SaaS ARRの当初予想を21,188~22,818(百万円)から、22,329~23,144(百万円)と、予想のレンジを引き上げています。着地は、その上限を超えていますので、極めて好調だったといえます。

中小企業のDX投資意欲に恩恵を受けている

画像:マネーフォワード「2023年11月期 通期決算説明資料

SaaS ARRの中でもとくにBusinessドメインの成長がいちじるしく前年比で46%の伸びとなっています。

画像:マネーフォワード「2023年11月期 通期決算説明資料

さらにその内訳をみると、中堅企業領域での伸びが前年同期比71%とかなり高く、デジタル化への移行が、大企業だけでなく中小企業へも広がりつつあることが見えます。日銀が行う企業アンケート「日銀短観」でも、中小企業のDX投資意欲は旺盛という結果が出ていました。その恩恵をダイレクトに受けているようです。

画像:マネーフォワード「2023年11月期 決算短信〔日本基準〕(連結)

新年度である2024年11月期の予想を見てみるとEBITDAは1,000~3,000(百万円)と、ついに黒字化となっています。おそらく決算発表翌日の株価の反応は、この点を評価したのでしょう。

今後注力していく分野は、利益率の高い法人顧客の獲得です。年間平均純増数は、順調に伸びていますが、この伸びが鈍化しないかは要注意です。

画像:マネーフォワード「2023年11月期 通期決算説明資料

ただ、船井総合研究所が実施した調査においては、アンケート対象となった会計事務所内においてマネーフォワードクラウド会計の利用が、2021年の13%から2023年は45%まで拡大し、1位に君臨したという内容もあります。こういったシステムは、スイッチングコストが高いため、一度導入されると変更しづらいと予想できます。さらにシェアを拡大し、独占するレベルまでになれば、事業環境は極めて安泰ではないでしょうか?

中長期の見通しは?

画像:マネーフォワード「2023年11月期 通期決算説明資料

決算発表と同時にマネーフォワードでははじめての中長期の見通しを発表しました。

これは投資家やアナリストからの意見もあったようです。5年後の2028年11月期には、売上高1,000億円以上、EBITDAは300億円以上。今まで開示した見通しについてはしっかり達成していますので、中長期の目標についても、自信と実績に裏付けられた数字と考えられます。達成の見込みは高確率だと期待したいところ。上場以来の成長の軌跡をみるとその勢いの強さが理解できます。

画像:マネーフォワード「2023年11月期 通期決算説明資料

時価総額は8倍以上、売上高は10倍以上!となれば、株価だって10倍になっていてもおかしくないはずです。ところが実際は現時点(2024年1月30日)で、上場時の5倍程度。これは過小評価されているかもしれません。

画像:TradingViewより

株価は、決算発表をきっかけに週足で上昇トレンドへと転換したように見えます。2023年はグロース株がガタガタだっただけに、2024年の巻き返しも含めて注目したいと思います。

※本記事は投資助言や個別の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資にあたっての最終決定はご自身の判断でお願いします。

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