男性用ティッシュから医薬品成分検出で自主回収指導、販売会社「知らなかった」と釈明

回収指導となった「メンズワイプゼロ」 「メンズワイプゼロマイルド」(販売会社ホームページより)

インターネットなどで発売されていた男性用ティッシュの中から医薬品成分が検出されたとして、ONE COLOR株式会社(札幌市中央区)が北海道から自主回収などの指導を受けた。医薬品医療機器等法違反の疑いがある。

報道によると、販売会社は医薬品について「入っているのは知らなかった」と話しているという。北海道などは健康被害が疑われる場合、速やかに医療機関を受診するよう呼びかけている。

長崎県の調査で発覚、道は自主回収の指導も

検出された医薬品名は「アトロピン」と「スコポラミン」、「メサコニチン」の3種類。同社が販売していた男性向けティッシュ「メンズワイプゼロ」「メンズワイプゼロマイルド」の中から検出された。過去のウェブサイトなどをさかのぼると、このティッシュには「男性用デリケートゾーンティッシュ」「植物性由来」「拭くだけ簡単」などの説明書きがあった。

この問題が発覚したのは、2023年12月に長崎県が公表した「買上調査」がきっかけだった。買上調査とは、認可されていない可能性がある製品を買い上げ、製品の成分を調べるもの。健康被害の発生を防ぐ取り組みで、インターネット上で売られているさまざまな医薬品などの製品を中心に実施している。

長崎県の調査後、県は情報提供という形で注意喚起。札幌市へ通報した。北海道でも調査を行ったところ、同製品から医薬品成分が検出された。札幌市によると、市は同社への立ち入り検査を行い、同製品の販売や授与をただちに中止するよう指導したという。また北海道においても、同製品の自主回収をするよう指導したと発表している。

販売業許可がなければ医薬品販売などはできない

今回、違反したとされている法律は「医薬品医療機器等法」。またの名を「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」ともいう。同法24条1項では、医薬品の販売業許可の規定として、以下のような条文がある。

「薬局開設者又は医薬品の販売業の許可を受けた者でなければ、業として、医薬品を販売し、授与し、又は販売若しくは授与の目的で貯蔵し、若しくは陳列(配置することを含む。以下同じ。)してはならない。ただし、医薬品の製造販売業者がその製造等をし、又は輸入した医薬品を薬局開設者又は医薬品の製造販売業者、製造業者若しくは販売業者に、医薬品の製造業者がその製造した医薬品を医薬品の製造販売業者又は製造業者に、それぞれ販売し、授与し、又はその販売若しくは授与の目的で貯蔵し、若しくは陳列するときは、この限りでない」

すなわち、「薬局開設者又は医薬品の販売業許可」を受けなければ医薬品販売などができないというわけだ。なお、前出の製品は医薬品として承認されていない。そのため、販売は規定の通り違反となる。

では今回検出された「アトロピン」「スコポラミン」「メサコニチン」という医薬品とは、一体何なのだろうか。札幌市や北海道などの資料をまとめると、以下の通りとなる。

(1)まず「アトロピン」とは、胃の分泌や有機リン系殺虫剤中毒などが使用対象。副作用としてはショックやアナフィラキシー、呼吸障害、粘膜の乾燥などがある。
(2)スコポラミンは麻酔の前投薬などとして使われ、顔面紅潮、嘔吐(おうと)、口が渇く、脱力感などの副作用がある。
(3)メサコニチンは、別名「ブシ」という名前の医薬品。鎮痛や利尿などに効き、副作用には舌のしびれやのぼせなどがある。

通報や調査などを実施した長崎県や札幌市、北海道は「摂取によって健康被害が発生する恐れがある」とし、健康被害が疑われる場合にはすぐに医療機関を受診するよう呼びかけている。

販売業者「指導を受けたのは事実。中国から仕入れた」

一方、製品を販売していたONE COLOR株式会社の一色良晃代表取締役は、本稿記者の取材に対し「指導を受けたのは事実だ」と回答。製品の仕入れ製造企業は、中国の「イージーライフインターナショナルグループ」だったとしており、「お客さまには、多大なご迷惑をおかけいたしますこと深く心よりおわび申し上げます。今後は再発防止と品質管理に努める所存でございます」とコメントした。ぜひ、再発防止を徹底してもらいたい。

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