SNSで聞いてみた、胃無しだけど何か質問ある? 42歳グルメブロガー、がんになる。(8) 毎日ビール.jp ユッキー

 先日、胃を全摘した胃無しのわたしへの質問を、SNS(Instagram)でなんとなく募集してみたのです。するといくつものレスポンスをいただいて、返信しまくりました。そっか、意外と「知りたい!」と思っていることがあるのですね。そんな新たな気付きがありましたので、胃を持つみなさんからの質問に対し、胃無しのわたしがQ&A方式で回答してみようと思います。

SNSで質問募集してみた

 この記事の回答は、基本的にわたしの経験をもとにつづっています。そのため医学的根拠はないものが多く、「こんな胃全摘患者もいるんだなぁ」程度にお読みいただければと思います。

 いただいた質問と回答は読みやすいよう、また個人が特定されないよう配慮するために、加筆・要約などの改変をしています。質問者には記事化する許可をあらかじめ得ています。

Q:おなかは減る? 満腹になるの?

回答:おなかは減るし、満腹になります。

 胃有りの健康体の方からの、素朴な疑問を前に「あっ、そこから質問されるのか!」と思いました。そっか〜、そうですよねぇ。笑 

 おなかの減りや満腹感には血糖値が関係しているらしく、わたしの場合、胃が無くてもおなかは減るし、満腹感もあります。

 わたしは胃全摘前から血糖値の上昇・下降に意識が向きやすく、胃の無い現在も相変わらずです。ちなみに夫は血糖値の変化がわからないのだそう。これについては、胃有り・胃無しを問わず、個人差が大きそうだなぁと思います。

 ちなみに、胃の切除後は食欲に関連する物質が減少すると聞きました。なので、胃全摘や胃切除を経験すると、食欲そのものが低下しちゃう人もいるんだとか。その点、わたしは食への興味・関心の度合いがあまり変化せず、相変わらずのガチマイっぷりを発揮しています。

福岡滞在中の深夜、おなかが減ってUber Eatsで「資さんうどん」を取り寄せた

Q:胃が無い感覚はありますか?

 回答:「胃が無い感覚」はあまり感じません。

 これまで生きてきて、「胃が有る・無い」ということを意識しておらず、質問をいただいて初めて「ああ〜、なんだそれは! わからん!」と回答に悩みました。笑

 それで今回、初めて真剣に考えてみたのですが、スキルス胃がんで胃が鎧(よろい)のように硬くなり、伸縮しなくなってしまった時は「食べ物や水をため込んでも胃が広がらずに張り裂けそう」という感覚が確かにありました。この時は胃に意識が向いていましたね。その前後、胃がんになる前と胃全摘の後は、胃が有る・無いということを意識して生活していないような気がします。

 もちろん、これまで幾度となく食べすぎて胃がパツパツになる経験をしていますが、胃全摘後の現在は胃ではなく腸がパツパツになるので、「おなかいっぱい」という状況・感覚に変わりはないように思います。一度に食べられる量はさすがに減ったので、以前よりは、早いタイミングでおなかいっぱいになります。

 ちなみに、わたしの体はだいぶ鈍感で、もともと痛みに鈍かったり麻酔が効きにくかったりする体質です。なので、もしかすると満腹感についても鈍感かもしれません。この回答も一個人の経験談として読んでもらえると良いかと思います。

そういえば、胃を失ってから寒さに弱くなった。急激に痩せたせい?

Q:栄養バランスや添加物、どうしてる?

  回答:食べられるものなら、なんでも気にせず食べてます。

 基本的に、食べたいものを食べるようにしています。ヴィーガンやジャンクフード、沖縄だと路上販売のお弁当はもちろん、旅先では、もつ鍋にラーメンなども試してみました。その時々で食べられるものを探しては試す…という繰り返しです。

 なるべくたんぱく質を取るように心がけ、肉・魚・豆腐・高たんぱくヨーグルトをよく食べています。胃を全摘したため鉄・ビタミンB12を摂取できなくなりましたが、どうにかならないものかとレバーを食べては悪あがきをしています。間食では、手軽に栄養を取れるバナナを口にするようになりましたし、後期ダンピングの気配を察知しては予防のためチョコレートで糖質を補給しています。

【ことば】ダンピング症候群 胃を切除したことにより、食べ物が消化不十分なまま腸へ落ちてしまうことで起きる腹痛や下痢、めまい、頭痛、手指の震えなどの不快な症状。食事中や直後に現れる「早期」と、食後数時間で現れる「後期」がある。

  また、これまでで、食事後に早期・後期ダンピングになったり、おなかの調子が悪くなったりしたものは遠ざけるようにしています。例えばてんこ盛りのご飯や麺類全般はおなかの調子が乱れがちですし、甘いチャンククッキーは後期ダンピングに苦しみました。そのような食べ物は避ける、あるいは摂取量を調整するように心がけています。ですから栄養バランスは二の次。限られた食品を選んではなんでも食べています。

 添加物はもともと気にしないタイプです。個人的には、人工的な甘味料・香料の味や風味が好みではないため、避ける傾向があります。もしかすると、意識せずに自然と食べていない食品があるかもしれませんね。

胃全摘すると鉄やビタミンB12が不足しがち。「焼鳥髙しな那覇」(那覇市牧志)でも悪あがきした

Q:退院後、最初の食事はなんだった?

 回答:お粥(かゆ)や白身魚の煮付け、茶碗蒸しなど。

 胃の手術で入院中の方が、病床から質問を飛ばしてくださいました。わたしは胃全摘で、質問者さんは胃を切除したそうです。状況は異なりますが、回答DMをお送りしています。

 胃全摘の手術後、実家の母が沖縄までサポートしに来てくれました。その中で伝授してもらったのは、幼い頃に体調を崩すと食べていた「卵味噌(みそ)のお粥」です。卵味噌は東北や北海道の一部のローカル食。幼少期に根付いた味覚は大人になっても変わらないもので、懐かしくて、おいしかったなぁ。簡単なので、興味があればレシピをググッてみてください。

 その他には白身魚の煮付けや、レンジ加熱する手抜きの茶碗蒸し、それに牛乳をたっぷり含ませたフレンチトーストもよく作りました。退院直後は、胃全摘前の大口・早食いの傾向が抜けておらず、食事が食道に詰まりやすかったのを思い出します。焼き魚で詰まったことがあり、それ以後、しばらくは薄切りの煮魚でたんぱく質を補給していました。

 入院中は普通食も食べていましたが、家庭で病院食を再現するのは難易度が高かったです。結果、家族には普通の食事を用意し、わたしはそれを介護食のようにとろみをつけたり、スープ風にリメークしていました。当時は食道に詰まった食べ物が抜けるのも時間を要したし、いつ詰まりが回復するのか先読みができなかったので、食の楽しみなどは後回しでした。

 もし外食するなら、食堂のボロボロジューシーか煮付けがオススメです。いまも詰まりに気をつけていますが、術後しばらくしてから焼肉やカレーなどをアグレッシブに食べられるようになりました。悩みはいつになっても尽きませんが、時間が解決してくれる部分もあるので、無理せずゆるゆると頑張りましょう!

胃全摘直後の食事を通じて、おかんの味を教わった

Q:飛行機でトイレに行けない状況って、怖くない?

 回答:トイレ行けないの、怖いなぁ…。

 とある内臓疾患をお持ちの方からのご質問です。飛行機は、ベルト着用サイン中や飛行が不安定なタイミングなど、トイレを自由に使えない時間がありますから、質問者さんが搭乗する時はビクビクしているとのこと。

 これ、とっても共感できる悩みです。実は、わたしも搭乗中にアクシデントを経験しています。以下はわたしの失敗談です。

 ある日の搭乗便がランチタイムに重なったので、機内で食べようと空弁を購入しました。離陸直後に食べ始めたのですが、わずか3口ほどで焼き魚が食道に詰まり…。ベルト着用サインはまだ点灯中。ほぼ満席の機内で、ひとり吐き出しそうなわたし。この時、食道の詰まりは久しぶりだったので、まさか上空で吐きそうになるとは思いもよりませんでした。

 胃全摘と内臓疾患では、症状やタイミングも異なるでしょう。質問者さんは「飛行機の最中は、『トイレに行きにくい、どうしよう!』という不安で、余計に症状を引き起こしているようだ」と言われていました。これにも深く頷(うなず)けます。なるべくリラックスして座席に座りたいですよねぇ。

 空弁で詰まった日を振り返ると、わたし自身のヨミが甘かったと反省しています。それ以降は、搭乗中の飲食は控えるようになったし、食事時間帯の便は積極的に押さえなくなりました。座席指定の際はトイレに行きやすい席を選びますし、搭乗前の食事は食道詰まりや早期ダンピングを想定して、搭乗時間60分より前に済ませたいと考えています。

 わたしの対処法はこんなところですが、他になにか良い方法があるよという読者さんがおりましたら、ぜひ教えてください。SNSのDMを開放してお待ちしています。

飛行中、焼き魚が詰まったのはわたしの食べ方のせい。空弁に罪はない

Q:ビールは飲んでもよい? ビールを飲んだらどんな感じになる? 以前より酔いやすくなった?

 回答:飲んでるけど意外と変わらない、かな。

 服薬期間を外せば、ビールを含めたお酒を飲んでもOKだそうで、お酒好きなわたしは飲酒を嗜(たしな)んでいます。わたしには食べ物を貯蔵する胃がありませんから、ビールを飲むと食道から小腸にスーッと入っていくのがわかります。これについて、少し説明してみますね。

 健康体のみなさんも、冷たいもの・温かいものを食べたり飲んだりすると、口から喉・食道・胃と順に冷温を感じるはずです。同じように、わたしも口から喉・食道・小腸にスーッと温度を感じます。先日、冬のキャンプ中にキンキンに冷えたビールを飲んだところ、冷たさがおへそ付近まで落ちていきました。その時初めて「胃全摘のルーワイ法って、そんな経路なのか!」と驚きました。魔改造した新しい体、おもしろいです。

 酔いやすさについては、病院からも注意するよう言われています。お酒は胃があるとゆっくり吸収されるそうですが、胃をすっ飛ばしてそのまま小腸に入ることで、急激に吸収されてしまうようなんですね。なので、お酒の量やペースを考えて飲む必要があります。わたし個人の感覚としては、それほど酔いやすさに変化はないものの、ビールの炭酸ガスでおなかが膨れてしまって、そんなにグビグビ飲めません。あとは、なるべくチェイサー(お水)を並行して飲むように心がけています。

 ちなみに味覚の変化もなくて、ホップの苦味や香りが楽しめるクラフトビールをおいしく飲めています。

味覚は胃全摘前と変わらず、クラフトビールの好みはIPAに行き着く

胃全摘後に考えた

 ということで、今回はSNSフォロワーさんたちからいただいた質問に答えてみました。他にも応援メッセージを寄せてくださったり、励みになる回答をいくつもいただいたりして、本当に感謝しています。いつもパワーをくださってありがとうございます!

 このようなQ&Aは、日常的に患者同士で行っていたりします。情報共有の場があるのとないのとでは、大きな違いがあるため、だから病院では患者同士が共感し合う場・支え合う会・病院外のイベントを用意してくださるのでしょう。わたしも通院先のピアナースさんから何度もお誘いいただきましたが、推し活やら子どもの予定やらなんやかんやで忙しく、タイミングが合わずに年を越してしまいました…。

推しバンドの紫ライブ。推し活に子どもの習い事、老犬介護やブログ執筆… 週末はドタバタだ

 患者会には参加できていませんが、病を公表した後、わたしには強い味方が何人もできました。部位は異なれど、がんに罹患した仲間がいたり、治療に用いた抗がん剤の種類が同じだったり、薬は違っても副作用のキツさやツラさを経験している間柄の人たちです。がんや治療を経験していない人にはわかりにくい悩みを相談できるのって、本当に心強いんですよ! リアル以外の出会いはSNS経由ばかりですから、時代に恵まれたなぁと思います。

 これまで一方的にわたしの経験を発信してまいりましたが、読者やフォロワーのみなさんが気になること・聞いてみたいことがあるようでしたらご連絡ください。それがどなたかの心のよりどころになるのでしたら、わたしとしてもうれしいです!

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