“政治はカネがかかる”は本当? パンフレットに500万円 「有権者がカネのかかる政治に寛容すぎる」 自民党裏金事件受け徹底調査

自民党の裏金事件では、東海地方の国会議員2人が立件されました。いずれも5000万円ほどの裏金を作っていたとみられています。「政治にはカネがかかる」と言われますが、それは本当なのか、そして何にどのくらいお金を使っているのか。取材しました。

一番カネがかかるのは「文書」

愛知県豊橋市と田原市が選挙区の愛知15区の元国会議員・関健一郎さん(45)。前回の衆院選で落選、今は返り咲きに向け、いわば浪人中の身。ガソリン代節約のため、毎朝自転車で30分かけて事務所に出勤します。

(関健一郎氏)
「ガソリンが1リットル180円ぐらいになったじゃないですか。お金ないので」

この日は、年に何度かつくる政策パンフレットの打ち合わせです。

(関健一郎氏)
「政治活動で一番お金かかるのって文書なんですよ。文書を作る、刷る、送る。これが一番お金がかかるので」

パンフレットを作って封筒に入れ、支援してくれそうな人全員に郵送すると、それだけで費用は400~500万円。それが年に何度も必要です。

街頭演説やSNSなど、コストのかからない情報発信にも力を入れていますが…

(関健一郎氏)
「やっぱり効果的なものにはお金がかかるんですよ」
「私が大学生の頃、ボランティアで行った強い自民党の政治家は後援会の名簿全員に年4回(自作の)新聞を配ってたんですよ。質も高くて内容も多くて。すごいお金かかってたでしょうね」

”効果的”とはズバリ、票集めに効果があるということ。確実な票が見込める後援会固めのパンフレットは、欠かせないといいます。

「現実的なマーケティングをしてコストを絞る」

今は「日本維新の会」の支部長として、党から毎月50万円の活動費を受け取っていますが、事務所の家賃(10万)と秘書2人の人件費(20万)、それに事務所の光熱費やガソリン代(+α)を差し引けば、手元に残るのは20万円足らず。

浪人の身で献金もなくこの範囲内で政治活動、言い換えれば選挙活動を行っています。

パンフレットは、郵送の費用が出せないため自らの手で配ることにしました。ポスターの設置も自らの手で行います。

(関健一郎氏)
「(ポスターは)信号機みたいに人が進む方向と垂直にあると目に入りやすいです。進む方向と平行だと目に入りづらいですね。限られた資金力で一個一個のポスターのインパクトをいかに大きくするか、これもコスト削減ですから」

次の選挙で返り咲きを目指す関さんは「政治とカネ」についてこう話します。

(関健一郎氏)
「政治にお金はかかるってそれはかかるんですよ。でも民間企業だってそうじゃないですか。だから現実的なマーケティングをしてコストを絞るわけですよね。これは政治家も当たり前」

「政治にカネは必要」 キーワードは”透明性”

一方で、パーティーや献金がなければ政治活動が成り立たないと話す政治家も。岐阜県の自民党・渡辺猛之参議院議員(55)です。

(渡辺猛之参議院議員)
「何らかの形で活動のための資金を集める方策は、どの議員の人にも必要だと思います。これは与野党関係なく」

国会議員の年収は、給与と手当を合わせて約4200万円。

渡辺議員の場合、ここに政党からの支給や企業献金などで年間約6200万円の政治資金を得ています。これに対し、支出は約4800万円。内訳は私設秘書5人の人件費約1900万円。事務所3か所の家賃約1000万円など。

公設秘書3人の人件費は国から出ますが、それだけでは政治活動ができないといいます。

(渡辺猛之参議院議員)
(Q.秘書3人でまかなうのは?)
「無理、絶対無理。3人だけで地元と東京をやるっていうのは絶対無理」
「まず色んな行事の案内をいただけるので、本人が出られるのは限られているのでそこに秘書さんに代わりに出てもらうとか。本人が議会活動をしているときに、地元から来た人の要望を聞いて議員に伝えたり」

渡辺議員はお金が必要な今の政治を肯定しつつ、金の流れを透明にすることが大事だと話します。

(渡辺猛之参議院議員)
「パーティーにしろ献金にしろ、一番のキーワードは”透明性”ということだと思う。この透明性をいかに確保して、すべての人にチェックをしてもらえるような態勢が作れるかどうかが今回の肝だと思っている」

「政治にはカネがかかる」をうのみにするな

国会議員や会計責任者合わせて10人が起訴され、今までにない注目を集めている政治とカネ。

かつて細川政権の首相特別補佐として、政治献金の規制強化などを行った元衆院議員・田中秀征さん(83)は、政治活動=選挙活動であることが問題だと指摘します。

(田中秀征さん)
「政治活動と選挙活動は違う。選挙活動はある意味で自分のためだが、政治活動は公のために何ができるかという問題だから」
「この機会にどうしても有権者に言いたいことは、選挙にカネがかかる、政治にカネがかかるということをうのみにしてはダメだと。かからないようにしろと言い返さなきゃダメだと」

ポスターの設置や電報の打ち合い、それに情報収集の名目で使われる飲食費など、選挙に関わる支出を大幅に規制すれば、政治家がお金を集める必要はなくなると話します。

(田中秀征さん)
「カネを集めれば集めるほど、政治的な自由は小さくなるんですよ。なんであの政治家はこういうことを言えないんだと。言えないのは必ず言えない理由があるんですよね。政治資金集めという点で。この20年間の間に政治が相当劣化してきていますよね。それは一つには、有権者がカネのかかる政治に寛容でありすぎるということだと思いますね」

CBCテレビ「チャント!」2024年1月29日放送より

© CBCテレビ