“地元に愛された”百貨店が23年の歴史に幕 「ありがとう」であふれた最後の日 「こんな幸せな人生はなかった」

(名鉄百貨店一宮店・藤本雅也店長)
「笑顔とありがとうがあふれる店であり続けたい!そう思い続け、心を一つにきょうの日を迎えることができました」

"最後の瞬間"は店長の言葉どおり、沢山の「ありがとう」であふれていました。「名鉄百貨店一宮店」この場所で23年と3か月。その歴史に幕を下ろしました。

名鉄一宮駅に直結するビルに「名鉄百貨店一宮店」はありました。

(従業員)
「名鉄百貨店は、お客様の感動と喜びを共有したいと願う企業です。本日もお願いします」

31日は、いつもと変わらない朝礼からスタートしました。

午前10時。店がオープンすると、多くの人が詰めかけました。

(常連客)
「寂しい。このまま続けてほしい」
「さみしい気持ちがある。長年お付き合いしてきたので」

デパートの5階にたたずむ「カメラのモリグチ」。開業当初から、ここで営業を続けてきました。

(カメラのモリグチ・森口達喜代表 81歳)
「そりゃ寂しいですよ。続けられるものなら続けてほしい。(Q.一番の思い出は?)そういうのは…寝る時に思い出すと思う。まだ思い出す暇もない」

代表の森口さんは81歳。23年間、愛用してきたという"秘密道具"を見せてくれました。

「ありがとう。またね!」地元に愛され続けた百貨店

(森口代表)
「これ、笑うでしょ?(Q.お子さま用では?)お子さまのですよ。これを大人の人にやると笑うんです」

最終日の31日は、店の片付けに追われていました。すると。

(元アルバイト)
「学生の時、アルバイトをしていまして…」

(森口代表)
「知っとるよ」

花束を手に森口さんを訪ねてきたのは、かつてアルバイトをしていたという女性。

(元アルバイト)
「あの、離しますよ。ずしっときますので、私の愛の重みが…」

(森口代表)
「あ~重てえなあ。めちゃくちゃ重たい」

開業当初から働いていた人は他にも。

(ハンドバッグ販売員・92歳)
「私は92歳なんですけど。人生の仕事の最後がここだったから。こんな幸せな人生はなかったと思う」

御年92歳のハンドバッグ販売員の女性。名古屋から名鉄電車で通っていましたが、それも31日で最後になりました。

(ハンドバッグ販売員・92歳)
「働きやすかった。いろんなデパートがありますけど、お客さんの人柄がいい」

地元・一宮市出身の店長、藤本雅也さんも自ら売り場に出向いて接客です。

(名鉄百貨店一宮店・藤本雅也店長)
「回るお菓子も愛知県では唯一ですが、きれいになくなってしまった。寂しい
思いがします」

一宮市内唯一の百貨店として、地元住民を中心に親しまれてきましたが「ネット通販の普及」に「コロナ禍」が重なり、昨年度の売上はピーク時の半分に。ビルの老朽化もあって閉店することになりました。

それでも最後の1か月は、閉店セールのおかげで、売上は去年と比べて2.2倍に。最後まで「地元に愛された」百貨店でした。

(元販売員・稲葉絵理香さん)
「宝物ですね。10代から働いていたので、一緒に成長した。街の人とも仲良くなって今もつながっている」

そして午後6時半。ついに「その時」が。

最後は、従業員と常連客が一緒になって、店のオリジナルソング「花束」を合唱。23年の歴史に幕を下ろしました。

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