耳が不自由な人も音楽鑑賞を 荘銀タクト鶴岡が赤外線補聴システム活用、23日に演奏会

赤外線補聴システムで音楽に聴き入る参加者。本番の演奏会に向け、システムの状況をチェックした=昨年11月、鶴岡市・荘銀タクト鶴岡

 コンサートホールの臨場感を耳が不自由な人にも楽しんでほしいと、鶴岡市の荘銀タクト鶴岡(市文化会館)は、音源を直接耳に届ける赤外線補聴システムを活用したコンサートを初めて企画した。23日に開催する。バリアフリー化の進展で同機器の導入施設は増えているが、活用事例が少ないことから日本障害者舞台芸術協働機構(JDPA)と連携、東北地方のモデル事業となることを目指す。

 赤外線補聴システムは演奏者の間近にあるマイクで拾った音をホール内に設置された4台の赤外線送信機がワイヤレスで補聴器に送る仕組み。さまざまな楽器などの音がよりはっきり聞こえる効果があるという。

 一般的な補聴器は特定の音を増幅して伝える特性がある。ホールの壁や天井に反射した音を座席の位置で拾ってしまうと「音の重なり」が楽しめないことが多く、コンサートホールの醍醐味(だいごみ)を楽しむことができない。

 同館は2018年3月に開所した。大ホールは約1100席あり、音の立体感を味わえるよう、音響設計にこだわった造りとなっている。当初から赤外線補聴システムのほか同じく聴覚障害者を助ける磁気を利用した補聴機材「ヒアリングループ」などを取り入れていたが、利用者からの問い合わせがなく、活用する機会がなかった。

 JDPAによると、県内で同様の機材は山形市のやまぎん県民ホールや酒田市の希望ホールなどに整備されているが、使用方法の普及が進まず、機材を利用した公演例は少ないという。

 本番に向けて準備も進んでおり、昨年11月には鶴岡工業高吹奏楽部の協力を得てミニコンサートを開き、実際に市内在住の難聴者5人を招いて楽曲ごとに座席を移動しながら聞こえ具合などを検証した。参加者からは「聞きやすく、純粋に音楽を楽しむことができた」「補聴器との接続がうまくいかない席がある」などの声が聞かれたという。

 本番当日は鑑賞支援としてほかに、ポータブル字幕機の貸し出しや車椅子専用スペースなども設置する。荘銀タクト鶴岡の担当者は「この公演を第一歩に、障害のある方への鑑賞サポートに力を入れていきたい」と話した。

【メモ】 鑑賞サポートが受けられるワンコインコンサート「音楽のじかん」は、23日午後2時開演。モデトロ・サクソフォン・アンサンブルがサックス四重奏で、バッハなどの曲を披露する。文化庁の「障害者等による文化芸術活動推進事業」の一環として開催する。全席指定で料金は500円(小学生以下無料)。問い合わせは荘銀タクト鶴岡0235(24)5188。

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