佐久間大介(Snow Man)「ソロ活動への想い」映画『マッチング』6000字インタビュー –

©2024『マッチング』製作委員会

マッチングアプリに登録したことをきっかけに始まるサスペンス・スリラー、映画『マッチング』が2月23日(金)より公開される。

佐久間大介(Snow Man)が演じたのは、マッチングアプリをきっかけに出会った輪花(土屋太鳳)のストーカーとなる永山吐夢(ながやま・とむ)。見た目も、行動も、明らかに異質な雰囲気を醸し出す吐夢は、確かに恐怖の対象ではあるのだが、それだけにはとどまらない何かを秘めている。それはきっと佐久間自身が持つものが作用しており、彼だからこそ表現できたキャラクターだ。

普段の明るく元気なイメージとは正反対とも言える吐夢を、どんなふうに捉えていったのか。「根っこの部分では吐夢と近いところはある」と言えるまで、キャラクターを掘り下げて行った役作りのことや、現場でのエピソードなど、たっぷりと語ってもらった。

【佐久間大介(Snow Man)】映画『マッチング』場面写真

Snow Manメンバーの感想は「ピッタリの役」

©2024『マッチング』製作委員会

――出演オファーを受けたときはどんな印象でしたか。

まず「俺に映画の話が来るんだ」って驚きました(笑)。それでどんな役かを聞いたら、ストーカーということで、「めちゃくちゃ楽しそうじゃん!」ってワクワクして。その後、お声がけいただいた理由とか、いろいろとお話を聞かせていただいて、より「やりたい!」という意欲が沸きました。

テレビやステージで見るような“元気で明るくてにぎやかな佐久間大介”というイメージがある中で、逆に陰の部分の表現が見てみたいということで、僕に声をかけてくださったらしく。イメージにないところを見てみたいとか、もっと見れるんじゃないかと思っていただけたことが、すごくうれしかったです。

――マッチングアプリについてはどんなイメージがありましたか。

難しいですよね。僕は(相手を)信用しなさそう(笑)。プロフィールに何を書いていいのかもわからないですし。アニメが好きとか、生き物が好きとか? 知らない人は怖いので、たぶん、向いてる割合で言ったら、30%くらいだと思います。

友人との連絡はわりとまめにできるほうなので、メッセージのやり取りは苦が無くできるタイプだと思います。ただ、自分にとって興味あるか、ないかでかなり返信のスピードは変わってくるかと。仲のいい人同士でのグループメッセージとかでも、自分が興味のない話題になったら全く返さなくなるので(笑)。そこは重要かもしれないです。

――本作への出演が決まったとき、Snow Manのメンバーからはどんな反応がありましたか。

「めっちゃ楽しみ」って言ってくれました。あとは「ピッタリの役じゃん」って。「俺の何を見て言ってるんだよ!」って思いましたけど(笑)。

Snow Manはメンバー内で新しい仕事が決まると、マネージャーさんが「誰々にこの仕事が決まりました!」みたいに報告会をしてくれるんですよ。あと、映画とか特に、お互いに内容を詳しく聞かないようにしているので、ストーカー役という印象でワイワイしていました。

結局、吐夢の原動力って愛なんです

©2024『マッチング』製作委員会

――内田英治監督からはどのようなお話がありましたか。

最初に顔合わせをさせていただいたときに、たぶん、このお話のプロットだったと思うんですけど、それを読んでみてほしいと言われて。そこで僕なりに表情とかをつけながらやってみたら、「君、目つき悪いね。良いね~」と言われました(笑)。

あんまりそんなふうに言われたことがなかったから、「マジっすか?」って返しつつ、そういう視点で僕を見てくれたことがうれしかったです。

それから、吐夢がどんな人なのかということについてたくさん話し合いました。初めに吐夢の軽い設定資料をいただいて、そのあと、脚本を読ませていただいたんですけど、僕の中で「ここは噛み合ってないな、どっちなんだろう?」とか、僕なりに吐夢のことを考えると「こういうことはしないんじゃないか」というような矛盾点やズレを感じるところがあったんです。

なので、その部分を確認したくて、監督に時間を作っていただいて、リモートでお話をさせてもらいました。吐夢の原動力となっていることとか、なんでこういう動きをするのかとか、何が好きなのかとか、そういうところをたくさん聞きました。やっぱり(原作・脚本も手掛ける)監督が生みの親なので。

すり合わせをする中で「そっちのほうがいいかもね」となったこともあったし。そういう確認をして、新たに吐夢を成長させることもできました。

――どのように吐夢というキャラクターを作り上げていきましたか。

結局、吐夢の原動力って愛なんです。愛があるが故の行動をしている。だから「吐夢にとっての愛ってどういうことなんだろう?」と考えながら作っていきました。ここでは言えないのですが、なんでそんなに愛を大事にするようになったのかという理由もいろいろあるんです。

――吐夢は、自分で「ピースフルなストーカー」と言ったりしますよね(笑)。

そこは捉え方次第ですけど(笑)。あれだけ変なことをしているし、見た目も変だし、信用できないですけど、愛着が沸くというか、どこか憎めないところもあるんです。一生懸命だし、あまり人のことを考えられない部分もあるけど、自分なりのアプローチになっているだけで、考えていないわけでもないんですよね。

©2024『マッチング』製作委員会

――現場で共演者の方とコミュニケーションを取りながら作っていく部分もありましたか。

吐夢については、どちらかと言うと、自分の中で作り上げたものを現場に持って行くというパターンでした。それが現場で変わることもありましたけど。

普通のお芝居って、目の前の相手に言葉や想いを届けることを大事にするじゃないですか。けど、本読みのときだったと思うんですけど、監督から「吐夢はそんなこと考えていないから届けなくていい」と言われて。自分の好きなものとか、言いたいことを勝手にしゃべってるだけだと。

だから、相手が「えっ?」って聞き返したくなるくらいのしゃべり方でいいと。「だって吐夢は変なんだもん」と言われました(笑)。

お芝居に限らず、こういうお仕事をするようになってから、何かを届けたいというマインドを常に持っていたので、それを届けないようにすることは、逆に難しいところでもありました。

あと僕、普段は声がデカいじゃないですか(笑)。でも吐夢は小さい声でぼそぼそしゃべるから、それをやろうとすると慣れてないので喉が締まり過ぎてしまって、ゴモゴモして言葉が聴こえなくなってしまうんです。

声を張らず、元気もなく、でもちゃんと聞こえるように話さないといけないのは苦戦しました。ただ徐々に慣れてきて、吐夢になるスイッチを入れると、自然と身体の形とか、中身も吐夢寄りになっていけたので、最後のほうは意識しなくてもできるようになりました。

――吐夢が何を言っているのか、輪花も聴き取れているのかな?という場面も。

ロケでの撮影のとき、吐夢と輪花の距離がわりと離れているのに、吐夢のぼそぼそしたしゃべり方をしていて。「これ、太鳳ちゃんに絶対聞こえてないだろうな」と思っていたら、太鳳ちゃんも「聞こえない」と思いながらお芝居をしていたみたいで(笑)。

けど、そのくらいのほうが「何だ、こいつ?」っていう感じが自然に出せるとも思って、逆にいい距離感になったと思いました。

僕と吐夢との境界線がなくなった

©2024『マッチング』製作委員会

――吐夢との共通点はありますか。

愛が原動力になっているところは同じかなと感じました。僕も自分が好きなものとか、愛を注いでいるものを、人に伝えたいとか、もっと広めたいとかって思っているし。「このキャラクターみたいになりたい」と思って、自分を変えていったこともあるし。

だから根っこの部分では吐夢と近いところはあると思います。吐夢はそういう想いを表現する方法をあまり知らないだけで、僕自身も子どもの頃は上手く表現ができていなかったから。そうやって掘り下げていくと、吐夢と似ている部分が出てくるなと思っていました。

――ちなみに、吐夢が別の人物に扮して、ドア越しに声をかけるというシーンがありましたが、あの声は、実際の佐久間さんの声ですか。

僕ですね。僕の声って特徴的なので、そこは気にしながらやりました。ハキハキとしゃべるイメージのある人物の声に真似るんですけど、それは吐夢にはない要素なんです。テストの時、自分なりにやってみたら「ちょっと元気過ぎるな」って言われてしまって。だから吐夢を崩し過ぎず、吐夢の限界ってどこだろうと考えながら調節しました。

©2024『マッチング』製作委員会

――影山役の金子ノブアキさんとのアクションシーンはどうでしたか。

僕の中で金子さんと言えば、映画『クローズZERO II』(2009年公開)のイメージが強くて、当時、Snow Manのメンバーもめちゃくちゃハマっていたんですよ。その方と戦わせていただくということで、やっぱりテンションが上がりました(笑)。メンバーにも超自慢しましたもん。みんな「マジか!? あの金子さんと」ってなってました。

ただ、いかんせん吐夢はケンカに慣れていないから、強くないんです。そういう奴が一番危なかったりもするんですけどね。足の踏ん張りがきかなくて、倒れ込んでしまうハプニングもあったんですけど、そこもそのまま使われていました。逆にリアリティがあって良かったのかなと。「吐夢だったらこうはしないよね」というのが、僕の中にあったので、自然と吐夢としての限界をやれていたと思います。

©2024『マッチング』製作委員会

――演じていて印象に残ったシーンは?

斉藤由貴さん(節子役)とのシーンは印象的でした。斉藤さんが作られる空気感がすごすぎて。一緒にお芝居をしていて、自分が引き上げられる感覚がありました。僕と吐夢との境界線がなくなったと感じるぐらい入り込めました。演じるというより心から吐夢になれていたというか、芯の部分から吐夢だったというか。

カットがかかった瞬間、「すごくいい時間だった」と感じましたし、スタッフの方からも「良かったね」と声をかけていただけました。楽しかったです。

――輪花役の土屋太鳳さんとの共演はどうでしたか。

テレビとかで観ていた印象と全然変わらなくて、本当にそのままでした。みんなが思う太鳳ちゃんが、太鳳ちゃん自身もやりやすいスタイルなんだろうなって。

太鳳ちゃんは自分のことを「器用ではない」と言っていたんですけど、人の機微を感じ取って、人の心に寄り添ったり、人の気持ちを大事にできる人だなと思いました。芯が強い人というイメージです。カッコ良くて、尊敬できる方ですね。

――役作りについて話すことはありましたか。

役については全く話してないです。それぞれが現場に持ってきたものでやっていた感じです。むしろそのぐらいのほうがいいというか。二人はバディとかではないので、歯車が合わないぐらいのほうが理想かなっていうのもありました。ただそういうことすら話さずに、何となくお互いに肌感でわかるものがあったんじゃないかと思います。

ナンバーワンより、オンリーワンであることが、僕は好き

©2024『マッチング』製作委員会

――本作は佐久間さんにとって、実写映画単独初出演となりましたが、「映画」というものにはどんな印象がありましたか。

映画に出たいという気持ちはありました。連続ドラマとかだと、途中で監督が変わったり、最後までストーリーがどうなるかわからなかったりすることがありますよね。でも映画だと、基本的に最後までストーリーも見えているし、監督も、スタッフさんも一緒で、みんなで一丸となって臨める。その熱量の込め方みたいなのが、僕は好きで。だから自分は映画に合っているんじゃないかと思っていました。

もちろん、連続ドラマのお話をいただけたら喜んでやらせていただくんですけど(笑)、作り方として映画がいいなと思っていたから、今回、出演できたことはすごくうれしかったです。

あと、演じる上での映画ならではのことで言うと、大きなスクリーンに映し出されるので、ちょっとした体の動きとかにいろんな意味を持たれてしまうことがあると思うんです。だから、その点は気にしていました。

ただ吐夢は無駄に動かない人間なので、もう少し動きのある人だったら、違ったアプローチも必要になったんだろうなと思いつつ、吐夢専用の動きをしていました。今回の経験は特殊過ぎて、吐夢以外には活かせそうもないですね(苦笑)。

――今後、また吐夢のような役のオファーが来たらどうしますか。

やりたいです。むしろ王道よりも、こういう役のほうがやってみたいです。ちょっと癖があるとか、普段の生活では味わえないような役に興味があります。ぶっ飛んでたり、人として何かしら欠けていたり、そういう人間を表現してみたいです。

©2024『マッチング』製作委員会

――普段からメンバー同士で、お互いの仕事の話はしますか。

しますね。みんなで一緒にいるときにもしますし、個々でご飯を食べに行ったときとかにもするし。ただ、役作りについて相談するとかはないです。基本的に自分が演じるキャラクターは、自分だけが作れるものじゃないですか。

それに、役に対してのアプローチ法とか、何かわからないことがあったとしたら、そのキャラクターを作り上げた人に聞かないとブレてしまうとも思うし。だから僕は似たような作品を参考にするとかもしないです。自分にしか作れないもので、自分の中のインスピレーションで作るものだと思っているので、変に他のものの影響を入れないようにしていました。

――他のメンバーのソロ活動はどのように見ていますか。刺激になりますか。

それぞれにやりたいこととか、新しいことができているのを見るとうれしいです。自分と比べるとかはしないですね。ナンバーワンより、オンリーワンであることが、僕は好きなので。誰かがやっていることを自分もやりたいとは思わないです。

自分の中でやりたいことはありますけど、誰かがやっているから俺も、みたいなことは、メンバーに限らず、誰に対してもないです。比べるって得意じゃないんですよね。自分のほうが優位だと思ったら嫌な奴になるし、下だと思ったらつらいし。だから比べないことがいいって思っています。

「マジで変な奴来た!」と思って、笑っちゃいました(笑)

©2024『マッチング』製作委員会

――本作では、「怖いな」と思うような、人の行動や一面も描かれていますが、佐久間さんが「怖い」と思ったキャラクターはいますか。

少し本筋とはズレますけど、マッチングアプリ内のやり取りを見ている運営の人が居て、あれが実際にあったら怖いなと思いました(笑)。マッチングアプリに限らず、スマホのアプリとかを使ってしている会話を、誰かが覗いているとしたら怖いですよね。絶対にあり得ない話でもないのかな?と、思ってしまいました。仕事のこととか、大事な話もするので。

人の感情として「怖いな」と思うことは、自分を満足させてあげられないことじゃないかな。自分に満足できないと、他人のことが良く見えてしまって、うらやましくなるとか、自分を追い込むとか、下手をすると相手を追い込むとかをしてしまうので。

「あの人にはあるのに、自分には何かが足りていない」とうらやましがることが、何かが狂いだす最初の段階なのかなと思います。だから、うらやましいと思い過ぎないことは大事だと思います。

©2024『マッチング』製作委員会

――完成作を観たときの感想は?

僕が演じていたときに感じていたものと、そこから編集をして、監督が表現したかった作品として出来上がったものに、少し違いがありました。「こういう感じにしたかったんだ」というものが、やっと知れた感覚がありました。

吐夢が出てくる場面に多いんですけど、真面目にやっているからこそ笑えることがあって。僕も試写で観たときに「マジで変な奴来た!」と思って、笑っちゃいました(笑)。Snow Manのメンバーは(取材時は)まだ観ていないんですけど、絶対に吐夢のシーンで笑うと思います。それが正しい反応だと思います。

海外で先行試写をしたとき(台湾で開催された『第22回 高雄映画祭』にて、ワールドプレミア上映を実施)も、吐夢が出てくるシーンで笑いが起きていたらしくて。僕が試写を観る前に、監督から「君が出てたところですごい笑いが起きてたよ」って言われて、「どういうこと?」って思っていたんですけど、観てみたら「これは笑うわ」って、納得しました(笑)。

©2024『マッチング』製作委員会

――見どころは?

この作品のテーマの一つが愛だと思うんです。愛にはいろんな形があって、愛という言葉にもいろんな意味があって。さまざまな愛が描かれているので、人を愛することや、愛というものについて、考えられる作品になっていると思います。

佐久間さんの演じた吐夢は、何とも言えない雰囲気を漂わせていて、怖いけど目が離せなくなるようなキャラクターになっています。“役者”佐久間大介の姿をもっと見てみたいという想いが素直に湧いてくる、ある意味でとても魅力的な吐夢を、スクリーンで確認してみてください!

それから、映画を観終わったあと、「もしかしてあの場面は吐夢だったの?」と思う瞬間があり、佐久間さんに聞いてみたところ、ご自身の特徴を隠すように工夫をして演じられていたそうです。「ラスト1秒、あなたの愛が反転する」というキャッチフレーズにあるように、最後の最後までお見逃しなく。

作品紹介

映画『マッチング』
2024年2月23日(金)より全国公開

(Medery./ 瀧本 幸恵)

© ぴあ朝日ネクストスコープ株式会社