片町の老舗「北間楼」食談で幕 フードピアで最終日飾る

大きな鯛の唐蒸しを記念に写真に収める参加者=金沢市片町2丁目

  ●再出発にエール 参加者惜しみながら味わう

 江戸末期創業の料理店「北間楼(きたまろう)」が3日、金沢市片町2丁目の現在地での営業を終えた。最終日は「フードピア金沢2024」(北國新聞社特別協力)の食談イベントが開かれ、約40人が伝統の加賀料理に舌鼓を打った。店は場所を移して再出発する予定で、常連客は繁華街から名店が去ることを嘆きながら「また北間楼の料理を食べたい。頑張ってほしい」と、創業160年を超える老舗にエールを送った。

 北間楼は1862(文久2)年に「北間屋」として創業した。1924(大正13)年に室生犀星が芥川龍之介を招いて句会を開いたことなどで知られる。片町で営業を続けるのは税負担が大きく、現在の店を閉じることにした。

 3日はフードピア金沢の「金澤老舗よもやま話」として室生犀星記念館元館長の笠森勇さんが講演した後、えびす、治部煮、ごり汁など、郷土の味がたっぷりと振る舞われた。大きな鯛の唐蒸しは、参加者が記念に写真に収めようと取り囲み、女将(おかみ)の北他紀子さん(80)が自ら皿に取り分けた。野々市市の会社員浦正光さん(59)は「お客さんを案内するお店として、北間楼なら間違いないという安心感があった。ここから無くなるのは残念だが、またおいしい料理を食べさせてほしい」と話した。

 店によると、現在の店舗は解体予定で、次の出店場所はまだ決まっていない。参加者を見送った北さんは「一日一日、精いっぱいやってきた。まだ実感がわかないが、これからだんだん、さみしくなってくると思う」としみじみと語った。

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