電線不足、学校工事遅れ 砺波工高長寿命化など3件 震災で品薄拍車の懸念

電線不足で電気設備工事の遅れが懸念される砺波工高実習棟長寿命化改修工事=砺波市鷹栖

  ●県、新年度繰り越し検討

 全国的な品薄状態で電線などの調達が間に合わず、砺波工高の実習棟長寿命化改修工事など富山県発注工事の一部が滞っている。県は3月中旬の工期までに完成できない可能性があるとし、工事を次年度に繰り越す「繰越明許費」を設定する方針。今後は能登半島地震で倒れた電柱や損壊した住宅の送配電復旧などで需要はさらに高まるとみられ、調達難が続けば早期復興の妨げとなる懸念が出ている。

 県によると、工事が滞っているのは、砺波工高実習棟の長寿命化改修工事2期工事(工期3月15日)のほか、富山いずみ高の1期工事(同3月25日)、高岡支援学校小学部棟増築工事(同3月22日)の3件。電線・ケーブルが納期に間に合わず、電気設備工事が遅れている。

 県は年度内の完成は難しいとみており、土木部営繕課の担当者は「工期を延ばそうと考えている」とする。繰越明許費を設定し、県議会2月定例会での議案提出を検討している。他の工事でも工期遅れが発生しないよう、業者に対しては電線やケーブルといった部材の早期調達を求めている。

 関係者によると、電線・ケーブルの需給圧迫は大阪の関西万博や熊本の半導体新工場建設など大型需要が重なり、メーカーの増産対応が間に合っていないのが要因とみられる。昨年12月には日本電線工業会が一部電線ケーブルの新規受注停止などを周知する通知を出し、納期に余裕を持った発注を呼び掛けた。

  ●復興対応は最優先に

 本格的な復旧、復興工事に向け、経済産業省は国内の電線メーカーや卸売会社に能登など被災地の復興需要を優先するよう要請している。日本電線工業会も震災対応の体制を整え、復興のため電線ケーブルが必要な場合は各メーカーとも最優先で対応する方針を通知している。

 県電気工事工業組合などによると、電線は送配電用から家庭用、イベント用ケーブルなどさまざまな需要があり、県内でも昨年から品薄となっている。調達価格は2倍程度に跳ね上がり、昨年11月ごろから納期遅れが深刻化しているという。

 地震を受け同組合は加盟23社の社員が能登で電気設備の復旧支援に当たっている。担当者は住宅や施設内の配線工事について、電線の量が十分かどうかは見通せないとし、「まずは電気の復旧、各家庭の設備確認をしてからだが、いざ電気を通すときに電線がないこともあり得る」と危惧した。

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