愛猫「まつり」無事帰る 伏木の美容院、地震後逃げ出す

「まつり」との1カ月ぶりの再会を喜ぶ伏江さん=高岡市伏木湊町

  ●本紙報道受け大捜索、「これで頑張れる」

 能登半島地震で被災した高岡市伏木の美容院で行方不明になっていた看板猫「まつり」が4日までに見つかった。地震から約1カ月たち、諦めずに捜索を続けていた家族や常連客、近隣住民の願いがかなった。いつもの日常へ一歩前進した家族は「これで頑張れる」と再会を喜び、いとおしそうに愛猫をなでた。

 「まつり」は伏木湊町で「ふしえ美容室」を営む伏江由起子さん(68)方の愛猫。青色と黄色の目が特徴の白猫で、発災直後の1月1日夜に逃げ出し、行方をくらませていた。伏江さんと夫の勲さん(74)、長女の絵吏子さん(25)、長男(29)は、猫の活動が活発になる夜間に毎日近所を巡回したほか、ポスターやSNSで情報を発信していた。富山新聞の報道を機に、地震を受け引っ越した知り合いも伏木に駆けつけて捜索に加わった。

 2月2日午後2時ごろ、近隣の70代女性から「まつり」に似た猫がいたと連絡が入った。伏江さんが駆けつけると、いつも日なたぼっこをする路上でうずくまっている「まつり」を見つけた。灰色にすすけた状態だったが、特徴的な青色と黄色の目だと分かり、伏江さんが名前を呼ぶと「ニャー」と返事をした。

 逃げ出す前と比べて体重は半分近く落ちたが、大きなけがはなく、獣医師からも「運動機能は特に問題ない」と診断された。元々怖がりな性格だが、物音により敏感な反応を示すようになり、甘えん坊になった。今は自宅で休んでおり、2、3時間おきに食事をねだるという。

 伏江さんは、内心ではほとんど諦めていたと不安な心境を振り返り、「無事に帰ってきてくれて良かった」と胸をなで下ろした。絵吏子さんは「まつり」がいない1カ月間は自身も食欲もなかったとし、「これでまた頑張れる」と目を潤ませた。先輩猫の「風太」も再会を喜び、これまでで初めて「まつり」の毛づくろいをして、いたわっている様子だという。

 地震の影響で、建物は傾きやひび割れなどの被害に見舞われた。建築関係者から「余震に耐えられない可能性がある」と指摘を受け、住居を移す決断を下した。美容院は伏木で続ける予定で、引き続き地域に根付いて経営を続ける。

 伏江さんは「新しい猫グッズもたくさん買った。暖かくなったら散歩に出掛けたい」と話した。

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