輪島、珠洲ため池4割危険 下流の災害リスク増

地震で堤防のブロックが崩れ落ちたため池=4日午後2時45分、輪島市小伊勢町

  ●県内243カ所被害

 能登半島地震により、下流に民家などがある「防災重点農業用ため池」の被害が4日までに石川県内で243カ所確認された。七尾、輪島、珠洲市内で計170カ所と全体の約7割を占め、輪島、珠洲では市内全体の4割以上のため池で亀裂、崩落などがみられた。5日以降は被災地でも悪天候が予想され、少しの雨でも決壊や土砂災害のリスクが高まっているとして、県などは注意を呼び掛けている。

 防災重点農業用ため池は付近に住宅や公共施設があり、自然災害で決壊した場合に人的被害が出る恐れがあるため池を指し、県内には全1183カ所ある。

 県は地震発生後、災害につながる恐れのあるため池の点検を開始。道路の寸断や倒木で輪島、珠洲などで調査ができていない場所もあるが、七尾市で204カ所のうち67カ所(32.8%)、輪島市は120カ所のうち52カ所(43.3%)、珠洲市は109カ所中51カ所(46.8%)で亀裂や崩落が確認された。

 輪島市小伊勢町の「小伊勢ため池」は舗装のブロックが剝がれ落ち、堤防は一部崩壊した。これ以上崩れないよう応急対策としてブルーシートを堤防にかぶせられたが、総貯水量4700立方メートルのため池が決壊すれば、15分後には下流数十メートルの場所にある約50軒の民家で浸水被害が起きると想定されている。

 小伊勢ため池から2キロほど西にある同市山本町の三谷内ため池は、倒木で道がふさがれた。近くに自宅がある山崎信寿さん(77)は「もともと補修する予定だったが、今は行けなくなった。もし被害があったら危ない」と不安を漏らした。

 県や輪島市によると、地元生産組合や町内会などの管理者に水位を下げるよう求めているという。珠洲市の一部ではポンプによる排水も実施している。今後、崩落した堤防を土で埋め戻すなど復旧に取りかかる方向だが、作業には時間がかかることが予想される。

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