新しい紙幣

 この夏新しくなるお札の3人は、実は本県の偉人と縁が深い。新1万円札の“顔”となる渋沢栄一と新5千円札に描かれる津田梅子の二人と親しかったのが、大村出身の石井筆子▲彼女の父、渡辺清は大村藩三十七士に挙げられる藩士で、貴族院議員なども務めた。筆子は10代で上京。障害者福祉がまるで整っていなかった明治から昭和にかけて、知的障害児者の教育に一生をささげた▲梅子とは、若い頃から同じ学校の同僚教師だったり、二人して国から米国へ派遣され「万国婦人倶楽部」大会に出席したり、女性解放運動などを通し盟友といえる間柄だった。梅子が開いた津田塾大の前身、女子英学塾は、筆子が校長を務めていた静修女学校が礎▲渋沢も筆子が運営する知的障害児者施設、滝乃川学園の理事長を務め、これまた縁が深かった▲新千円札の顔となる細菌学者の北里柴三郎は内務省の初代衛生局長として国民の健康のために働いた大村出身の長与専斎と浅からぬ縁があった▲海外で実績を上げながら、国内で活躍の場がなかった北里を見かね、奔走したのが専斎。慶応義塾の創設者、福沢諭吉との縁を取り持ち、北里の活躍の場となる伝染病研究所の設立を手助けした。新紙幣発行が円ならぬ縁となって、大村の偉人を引き立ててくれるとうれしい。(屋)

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