【寄稿】「『国会議員』とは」 長崎から新たな動きを 柴田守

 自民党派閥の政治資金パーティーをめぐる裏金事件で、政治資金規正法違反の虚偽記載の罪で略式起訴された衆院長崎3区選出の谷川弥一氏が先月、自民党を離党した上で、議員を辞職した。
 衆院議員を7期務めた谷川氏については、長崎県民が長年信頼して国会に送り出したのだから、就任期間中に一定の功績を残したと信じたい。しかし、疑惑発覚後の一連の対応において他者への敬意を欠き、人格を否定する発言を行った上、十分な説明責任も果たさぬまま辞職したことで、これまでの信頼と功績を帳消しにし、晩節を汚したと言わざるを得ない。とても残念なことだ。
 立法府の構成員である国会議員には、選挙区内での意見の相違を尊重して、それを国民の多様な意思として政治過程で公正かつ忠実に反映させることが憲法上求められている。こうした政治行動を遂行するためには、そもそも「聞く力」という資質が至極当然に求められており、その前提として、他者の人格を尊重してその価値を認める態度(尊厳)も備えていなければならない。
 そして、自らの言葉と行動に責任を持ち、権力の使い方を誤らず、時にはリーダーシップを発揮し、国民と正面から向き合って、説明責任と政治活動を果たすことが期待されている。国会議員とは本来、こうした「信頼」のもとに選出され、国会に送り出されるべきものである。
 だが現状は、政党ガバナンスの問題を与野党ともに抱え、政治とカネの問題が長年繰り返されていることから、国民には諦めが生じており、それが投票率に反映されてきた。しかし、このまま野放しにしていたとしたら、結局は私たち国民自身の首を絞めてしまうことになる。
 国会議員に対する不満が爆発寸前である今こそ、私たちが言葉と行動で常に政治に働きかけていく姿勢を取り戻し、真に「信頼」のおける候補者を見極めて選出することが必要なのではないだろうか。
 衆院長崎3区は、区割りの変更によって次の総選挙で消えゆく運命にあるが、島根1区、東京15区と併せて4月に行われる見通しの3補欠選挙では自民党の“再出発”が厳しく問われる。3選挙区の選択には全国の視線が注がれることになるだろう。
 県民がSNS等であらゆる企てを行って連帯を図り、長崎から全国に向けたムーブメントを起こすチャンスなのだと筆者は信じている。衆院議員の任期満了まで残り2年を切った。長崎県民の力で現状を大きく変えることに期待したい。

 【略歴】しばた・まもる 1977年、北九州市出身。長崎総合科学大准教授を経て、2023年度から独協大法学部教授。元長崎市安全・安心まちづくり推進協議会会長。専修大学大学院法学研究科博士後期課程修了・法学博士。

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