340年余り前に狩野派の絵師が描いた涅槃図の一般公開が1日、武雄市北方町の永林寺で始まった。狩野派の絵師「狩野信周」の署名があるものの、信周についてはほとんど研究が進んでおらず、遙山俊寛(はるやましゅんかん)住職(51)は情報提供を呼びかけている。釈迦が入滅した15日まで公開する。
狩野信周は、龍造寺家に仕えた絵師、狩野文周(元頼)の三男。多久市の妙覚寺が所蔵する「紙本着色仏涅槃図」(多久市重要文化財)も手がけている。
永林寺の涅槃図は絹に彩色を施しており、縦1.83メートル、横1.7メートル。光り輝く姿で横たわる釈迦を中心に、菩薩や羅漢、弟子、動物たちが嘆き悲しむ姿が描かれている。大正時代に修復が加えられたが、彩色などの劣化が進んでいる。
右下に製作年を示す延宝9(1681)年、左下に信周の署名がある。信周が20歳頃の作。多久市の妙覚寺の涅槃図は60歳頃の作で、40年近い開きがある。
遙山住職は「二つの涅槃図を見比べると、20歳の作は定型的な描き方で、しっかりと手本に従ったように見える。ほかにも作品を残していないか、情報を寄せてほしい」と呼びかけている。情報提供は永林寺、電話0954(36)2642。(古賀史生)