断水でも作りたてを 珠洲2校、給食再開に奔走

久しぶりの手作りの給食に笑顔を見せる生徒=5日午後0時45分、珠洲市三崎中

  ●ふっくらご飯に笑顔

 教室で食べる炊きたてのふっくらご飯に笑みがこぼれた。珠洲市三崎中、みさき小で5日、能登半島地震による断水で中断していた給食が再開された。「お米がめっちゃおいしい」「野菜たっぷりでうれしい」とどんどん箸を進めた子どもたち。再スタートの裏には、レトルトでも出来合いでもない作りたてを用意して、少しでも日常を取り戻してもらおうと奔走した職員の尽力があった。(向島徹)

 5日午後0時25分。三崎中の1~3年、特別支援学級の計4クラスから13人が一つの教室に集まり、円形に机を並べた。避難などで通ってくる子どもが減り、地震後に学校が再開してからは登校した生徒全員で昼食を取っている。

 机に並んだのは鶏の唐揚げ、スパゲティサラダ、コンソメスープ、ご飯、牛乳の5品。給食当番が「いただきます」とあいさつすると、食べながらの会話が弾んだ。

 2年の松井颯志さん(14)は「全部が最高にうまい」と笑顔を見せ、3年で生徒会長の知家日菜乃さん(15)は「地震前の給食と同じはずなのに、お米の味が全然違う。やわらかくて甘い」と驚いた。ご飯とサラダをお代わりした3年の干場湧仁さん(15)は「久々にがっつり揚げ物を食べられた」と声を弾ませた。

 給食は校内の共同調理場で調理員3人が作り、みさき小にも配送した。メニューを考えたのは三崎中の臨任栄養職員田中彩子さん(43)だ。1月末から調理場の安全点検や配送業者への連絡に追われたという。「給食だけでもおなか一杯になってほしい」と、地震前より1人当たりの量を多く用意したそうだが、「完食」だった。

  ●節水欠かせず

 珠洲市内の学校では、校舎の被害が軽微で、給排水できる浄化槽・受水槽を備えた三崎中が最も早い給食の再開となった。ただ、断水のため、頼りは災害支援の給水車で節水は欠かせない。

 市教委の今井智生さん(28)は「一番恐れていたのは、調理や洗い物の最中に水が尽きること。予想よりタンクの水の減りが少なく、ほっとしている」と安(あん)堵(ど)の表情を見せた。

 今後も食器の量を減らすなど節水を続ける予定で、濱野裕之校長(59)は「給食で少しずつ生徒が通常の感覚に戻り、学校のムードも明るくなってほしい」と期待する。たくさんの生徒のにぎやかな声が校舎に響く日が待ち遠しい。

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