かかりつけ医飛んで行く 能登町小木の医師、ヘリで南加賀に

かかりつけの患者に健康状態を尋ねる瀬島さん(左)=3日午後、能美市内の研修施設

  ●避難先でもつながり保つ「顔見てほっとしたわ」

 能登町小木の「小木クリニック」院長の瀬島照弘さん(55)が3日、能登半島地震で被災し南加賀で避難生活を送る患者6人の元を訪れ、診察した。「気心の知れたかかりつけ医にしかできんことがある」。瀬島さんは石川県医師会の協力を得て、能登からヘリコプターで駆け付けた。「先生の顔見てほっとしたわ」と、久しぶりの再会に笑顔を見せる一人一人に瀬島さんは優しく声を掛けた。

 「元気そうでよかったけど、血圧が高いね。こんなに高いことなかったのに」。瀬島さんは加賀市内の旅館に小木から身を寄せている70代男性の血圧を測定し、食生活などを尋ねた。「運動しようなんて気持ちにならんかもしれんけど、筋肉を落としたらだめだよ」と語り掛け、心配ごとがあったら気軽に電話してほしいと伝えた。

 能美市の研修施設「ウェルネスハウスSARAI」では、小木から避難している板谷京子さん(81)を診察。「血圧が高く、歩き方がぎこちない」として、スリッパではなくズックで歩くようアドバイスした。

 小木には歯科医を除くと医院は小木クリニックしかない。2014年の開業時から通う板谷さんは「安心しました」と話した。

  ●能登空港→金沢へ 車で能美、加賀

 瀬島さんは3日、能登空港をヘリで出発し、金沢市に到着。患者の避難先リストを基に車で能美市や加賀市を回り、診察した。患者は血圧の上昇や筋力低下の兆候、足のむくみなどがみられたという。4日は金沢市などの避難所を回り、能登町に戻る。

  ●県医師会が支援

 患者の多くは金沢市以南に2次避難しており、誰がどこにいるのかも分からない。そんな中、瀬島さんは「かかりつけの患者との絆が切れてしまうのではないか」と案じ、県医師会に避難場所を巡回する機会がほしいと求めた。

 これに対し、県医師会は地域医療を維持するためには、患者とのつながりを保つことが大切として支援を決めた。日本医師会災害医療チーム(JMAT)も協力した。

 県医師会は今後も被災地の医師が避難した患者を診療できるように協力する方針。瀬島さんは「安心してもらえたのであれば行ってよかった。かかりつけ医だから相談できることもあるだろうし、症状の変化にも気付ける。今後も続けたい」と語った。

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