[社説]自民「裏金」調査 派閥幹部の国会招致を

 国会は5日、衆院予算委員会で2024年度予算案の実質審議に入り、「政治とカネ」を中心に論戦が展開された。

 審議に先立ち、自民党は派閥の政治資金パーティー事件を巡り、「裏金」を受領した議員リストを野党に提示した。

 政治資金収支報告書に不記載があった議員リストには安倍、二階両派の現職議員81人の名があり、安倍派の実力者「5人組」や二階俊博元幹事長も含まれている。

 質疑の中で岸田文雄首相は、自民党所属の全国会議員を対象に裏金の有無を確認するアンケートを「来週早々に取りまとめる」と述べた。

 安倍、二階、岸田3派を対象に先週開始した聞き取り調査については、週内をめどに作業を終え、外部の第三者が取りまとめると説明した。

 実態解明のため立憲民主党など4野党は、自民所属の全員を調査し、裏金受領議員リストを国会に提出するよう求めていた。

 しかし提示されたリストは2派の3年分にとどまり、何に使ったのかも分からない、極めて不十分な内容だった。

 2日に始まった議員への聞き取りも、担当するのは自民党の森山裕総務会長ら幹部6人。

 全議員へのアンケートは旧統一教会のときと同様、あくまで自己申告でしかない。

 信頼回復には中立的な立場の第三者による公正な調査が必要だが、「お手盛り」で全容が解明できるとは、とても思えない。

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 野党からは安倍、二階両派幹部の政治倫理審査会への出席を求める声が強まっている。

 岸田首相は施政方針演説で「自民党は変わらなければならない」と述べ、政治改革に決意と覚悟を示した。

 解体的な出直しというのなら、客観性に乏しい調査ではなく、裏金に関係した議員の国会招致に応じるべきだ。

 政倫審はロッキード事件を契機に衆参両院に設置された。疑惑を受けた議員本人が申し出た場合か、委員の3分の1の申し立てと過半数の賛成で開催できる。

 安倍派「5人組」など派閥幹部について、東京地検特捜部は嫌疑なしとし立件を見送った。それでも幹部には不正をただす義務があり、その政治的、道義的責任は免れない。

 裏金がなぜ必要で、何に使ったのか、具体的に語るべきだ。やましいことがないのなら率先して出席し、説明を尽くさなければならない。

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 共同通信社が3、4両日に実施した全国電話世論調査で、裏金の使い道について「説明する必要がある」との回答が84.9%に上った。派閥幹部の不起訴処分には、83.4%が「納得できない」と答えた。

 政治不信は収まらず、岸田内閣の支持率は24.5%と最低水準にある。

 この日の予算委で岸田首相は政治資金規正法改正を「今国会で実現する」と明言した。

 裏金事件の実態解明とともに、取り組むべきは政治家の責任を問う仕組みの強化。「連座制」を導入する必要がある。

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