“リニア問題” が進展?「47項目のうち30項目は未解決」県が“現状認識”示す 7日に国が知事と面会へ(静岡県)

リニア問題をめぐり、静岡県は、47項目の課題のうち30項目は解決していないという見解を示しました。一方、国の有識者会議は、すでに「全ての議論を終えた」としていて、7日に国交省の鉄道局長が川勝知事に直接説明する予定です。

(静岡県 森 貴志 副知事)

「(リニア問題の)現状と今後どういう方向で進めていくのかについて、お話ししたい」

5日、森副知事は「リニア問題の現状と今後の方向性を示す」として会見を開きました。大井川の水問題、トンネル工事で出た残土置き場、南アルプスの環境保全の3つの課題があるリニア問題。

県は2019年に47項目の課題を取りまとめ、県とJRの仲裁役として設置された国の有識者会議が議論を続けてきました。国の有識者会議は、約3年半にわたって議論し、2023年12月、南アルプスの環境保全に関する報告書を国交省に提出。国交省は、県が示した47項目の課題について「議論を終えた」との認識を示していました。

議論は一区切りしたとする国に対し、川勝知事は反発。

(川勝知事)

「有識者会議では十分な議論がされず、解決されないまま報告書がとりまとめられた。不十分な点について、県の専門部会とJR東海で対話を進めたい」

県の専門部会で引き続き議論を続ける考えを示していました。しかし、知事の姿勢に対し苦言を呈する市長も…

(静岡市 難波市長)

「静岡市が10合目に達していても、県が10合目に達していなければ、問題解決にはならない。静岡市の認識では、県も8合目まできていると思う。県がどう評価するかは別問題」

(島田市 染谷市長)

「分をわきまえて話をされることが、JR東海や国、関係機関に対しても、誠実に物事を前進させるために、大事なこと」

こうした中、県は5日に、47項目の課題に関する議論の進ちょくについて発表しました。

水問題については、田代ダムの取水を抑えて大井川の水量を確保する案がJR東海と東京電力側で合意したことなどをうけて、26項目中17項目が“解決済み”としました。一方、「工事前の生物調査が不足している」と指摘している南アルプスの環境保全に関する17項目と、「さらなる詳細な設計やリスク管理が必要」とする残土置き場に関する4項目については、すべて“未解決”としました。

( 県 石川英寛 政策推進担当部長)

「(生物調査は)簡単な調査ではない、100%何年もかけてやれというつもりはない。どこまでやる必要があるか、一定の水準をクリアできるのかは(JR東海と)しっかり話をしないと」

国の有識者会議が、約3年半にわたる議論を終えても「未だ30項目の課題が残っている」とした森副知事は…。

(静岡県 森 貴志 副知事)

「確かに数字は残っているが、議論が全く進んでいないというわけではない」

Q:議論終了には時間がかかるのでは?

「議論は進んでいますので、正直、いつまでとは想像がつかない」

終わる目途は「想像がつかない」と話した森副知事。国の有識者会議がまとめた報告書については、7日、国交省の村田鉄道局長が県庁を訪れ、川勝知事に直接説明する予定です。

【スタジオ解説】

リニア問題をめぐり、47項目の課題のうち30項目は“未解決”とした県の主張を整理します。

大井川の水量減少が懸念される水問題については、26項目のうち17項目が“解決済み”としました。田代ダムの取水を抑えて大井川の水量を確保する案が、JR東海と東京電力側で合意したことで、県は「対話は進ちょくした」と評価しています。一方、トンネル工事で突発湧水が発生するなど、想定外の事態に対応するリスク管理などを今後の課題としました。

次に、南アルプスの環境保全をめぐる課題については、17項目すべてが“未解決”としました。県は、国の有識者会議で「一定の進ちょくは見られた」と評価していますが「工事前に沢の上流部で生物調査を行うべき」と繰り返し主張しています。一方、JR東海は「沢の上流域に行くまでに危険が伴うため、調査は難しい」としていて、議論は平行線をたどっています。

そして、トンネル工事で出た残土置き場の問題についても、4項目すべてが“未解決”としました。JR東海は、工事で出た残土の大半を「ツバクロ」という場所に盛り土する計画ですが、県は、詳細な設計やリスク管理を求めていて、解決の道筋が見えていないのが現状です。

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