倒され、吹き飛ばされながら強くなる川真田紘也(滋賀レイクス)

1月28日の福島ファイヤーボンズ戦を105-108で落とした滋賀レイクスは、その後1月31日に西地区首位攻防戦となる熊本ヴォルターズ戦に101-104で敗れ、さらに2月3日、4日にも現時点でのB2最高勝率で東地区首位を走るアルティーリ千葉に連敗を喫した。A千葉戦はその前の2試合に続きいずれも100失点以上だっただけでなく、どちらも30点以上離されての大敗(GAME1が68-105、GAME2が80-116)。今シーズンワーストの4連敗で、滋賀は西地区首位から3位に順位を下げている。

そんな厳しいチーム状況で、良い兆しの一つと言えそうなのが川真田紘也のプレーぶりだ。

川真田に関しては、FIBAアジアカップ2025予選Window1に臨む男子日本代表合宿参加メンバーに名を連ねることが、熊本戦当日に公になっていた。奇しくもその日以降3試合続いた上位チームとの対戦で、川真田はそれまでのシーズンアベレージ(平均6.5得点)を上回る平均9.3得点、3.0リバウンド、1.0アシスト、0.7ブロックを記録。数字にならないハッスルも含め、進化を感じさせていた。どんな部分が良かったのだろうか。

1/31 vs.熊本——“暴れマクリーン”とのマッチアップ
第3Q終了時点で6点リードしていながら、第4Qに逆転されて敗れた熊本との一戦で、川真田は13分58秒間の出場し、数字としてはフィールドゴール3本中2本を成功させて6得点、2リバウンドと1アシストを記録している。スタッツは控えめだが、ここでは別の部分に注目してみたい。

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川真田はこの試合でジャメール・マクリーンとマッチアップする時間が長かった。身長203cmのマクリーンは“暴れマクリーン”の異名を持つセンターフォワードで、この試合でも最終的に22得点、10リバウンドと大いに暴れて熊本の勝利に貢献している。これを見れば、勝負として川真田がマクリーンを抑えたとは言えないことが明らかだ。しかし、第3Qまでは川真田のディフェンスも力強く、クォーター終了時点では6得点、6リバウンドだった。

川真田のハンドチェックに対し、マクリーンはかなり力を込めて振り払うような場面があり、バンプなどのコンタクトも遠慮なくしてきた。しかし第3Qまでの川真田はそのフィジカルさにイラつくことなくうまくいなし、またスウィッチして別のプレーヤーに対応する際にも、相手が突っ込んでいきたいコースにうまく立ちふさがる好ディフェンスができていたのだ。

オフェンスでは、タイミングよくガード陣にスクリーンをセットし、そこからオープンスペースにスリップ(ペイントに向かうカットムーブ)して、ボールを受けられる優位なポジションをたびたび確立した。第3Q残り31秒に、野本大智とのコンビで奪った自身6得点目(チームとしては75点目)がこの例だ。この場面で川真田は、トップ付近でドリブルする野本にハイスクリーンをしかけ、野本のドライブに合わせてペイントに走り込み、ボールを受けて軽やかなユーロステップからレイアップを流し込んだ。

この試合に関しては、トランジションやトラップでのディフェンス、リバウンドでもうひと頑張り期待したかった部分もある。特に第4Qにやや集中を欠いたような場面があったのが残念だ。この時間帯には、ディフェンス・リバウンドのボックスアウトがやや甘くなりマクリーンに奪われ、セカンドチャンスでダンクを叩き込まれている(ファウルもコールされスリーポイントプレー成功)。フィジカルな相手とのタフな戦いを闘志と冷静さを保って継続し、ハーフコートの攻防でのコミュニケーションやIQの高さも強く感じさせていただけに、あとはそれを試合終了までやり切るだけという印象だ。

2/3 @ A千葉——相手ビッグマンのダンクを体を張って阻止

A千葉とのGAME1は、試合結果についてはぐうの音も出ないほどの完敗だったというべきだろう。ただ、実はこの日、故障離脱していたジャスティン・バーレルが復帰できる見込みがあったという。不運にも直前にコンディション不良となりバーレルが出場できなくなったことで、ゲームプランが大きく変わってしまったのだ。その結果、失点が100を超えただけでなく、今シーズン最大の屈辱的37点差。言い訳はできない。今シーズン初めてスターター起用となった川真田にも、その責任の一端は間違いなくあるだろう。

しかしこの一戦で川真田は、滋賀から大挙して訪れたブースターの大声援を受けて闘魂を見せた。数字的にも9得点、6リバウンド、1アシスト、1ブロックと攻守両面の貢献を記録したが、何よりその奮闘を象徴したのは、アレックス・デイビスやブランドン・アシュリー(どちらも川真田より大きな身長206cm)の前に立ちはだかったディフェンスだ。

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第3Q残り5分30秒過ぎ、2-3ゾーンディフェンスのガード陣2人をデイビスが突破し、猛然とゴールに跳びかかる場面があった。それに対し川真田は垂直に飛び上がって空中で体を張るが、豪快なアテンプトに吹き飛ばされてしまう。フロアに崩れ落ちた川真田は、しばらく起き上がれなかった。

しかし川真田のへこたれない根性が即座に実を結ぶ。ダンクをぶち込めなかったデイビスはフリースローを獲得。しかし2本目はミスとなり、そのこぼれ球を川真田が拾った。すると川真田は次のオフェンスで、ライアン・クリーナーのドライビングダンクを演出する“スクリーンアシスト”をデイビスに対してしかけ、静かなるリベンジに成功したのだ。

もう一つ、アシュリー対川真田の空中戦が見られたのは同クォーター残り1分31秒。トップやや右でボールを受けたアシュリーが、ドリブル一つでグンと加速してペイントに突っ込んできた。大きく振りかぶるウィンドミル・ダンクの体勢で空中高く飛び上がり、これはやられたかと思われたその瞬間に川真田の登場だ。川真田はアシュリーと空中で激突。交錯したままフロアに崩れ落ちた。

このプレーでは川真田のファウルがコールされ、アシュリーがフリースローで得点に成功している。しかし、絶対に決めさせないという決意に満ちた川真田のプレーがチームを鼓舞し、ブースターを奮い立たせたのは間違いないところだ。

上記の2つのプレーは決して攻守双方ともラフなプレーではなかったことを明記しておきたい。オフェンスがゴールに向かってプレーし、ディフェンスはシリンダー上で垂直に飛び上がろうとしていたのであり、どちらもむやみに体当たりをくらわせるような野蛮な行為ではない。ただしどう猛なプレーだった。これぞプロバスケットボールの醍醐味だ。

もう一つ、A千葉にシーズン途中で加入した身長226cm、体重130kgの超大型センター、リュウ チュアンシンとのマッチアップも忘れてはいけない。川真田が記録した1ブロックは、第2QにBリーグ歴代最長身のリュウを止めたもの。身長で22cm、体重で20kg上回られている川真田だが、目・腕・体のコーディネーションの点では負けてはいないのである。

ほぼ勝負が決してしまった後の第4Qにもリュウと川真田は何度も勝負した。ゴール下で押し込まれて失点する場面はあった。しかし、リバウンド争いで一瞬早くボールをはじき、50-50ボールにしたところを味方が自チームのボールにしたプレーもあった。リュウはまだまだ発展途上のタレントではあるものの、現段階でも規格外の大きさにミドルレンジ以上のシューティングタッチやアシストの感覚が備わっている。そのリュウに様々な形で対抗できることを、この試合で川真田が示した意義は小さくないだろう。

2/4 @ A千葉——フィールドゴール5本すべて成功で13得点

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A千葉とのGAME2は、前日に続き80-116という大敗。序盤から突き放され、勝機と呼べそうな瞬間の気配さえほとんどなかったような展開だった。しかしそれでも、前日同様に滋賀ベンチ後方のブースターは驚くほどの熱気で声援を贈り、チームとしても厳しい展開の中で意地を見せる場面はあった。第3Q終了間際に湧川颯斗が成功させた、ブザービーターとなる3Pショットはその一例だ。

この日ベンチスタートに戻った川真田は、今シーズン2番目に多い13得点を記録した(川真田のシーズンハイは昨年11月12日の新潟アルビレックスBB戦での14得点。また1月28日の福島戦でも13得点がある)。フィールドゴールも5本すべて成功させている。GAME1では、例えば身長203cmのデレク・パードンに1対1をしかけ、自分からコンタクトしてスペースをこじ開けながら決めきれないような場面があり、フィールドゴール成功は11本中3本のみ。GAME2ではフィニッシュの内容が前日と大いに異なっていた。

リュウとの勝負も前日に続き見応えがあった。第3Qにはリュウの前でレイアップを決め、ファウルをもらってスリーポイントプレーを成功させている。第4Qには、前日デイビスに対して成功させたのと同じような“スクリーンアシスト”をリュウに対してしかけ、湧川に花道を作ってドライビングレイアップをお膳立てした場面もあった。

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熊本戦で課題に感じられたトランジションやトラップディフェンスの処理を改善しながら、A千葉とのGAME2で見せたような活躍を40分間できれば、川真田は身長204cmの“スモールファイブ”として、リーグ屈指のビッグマンになれるのではないだろうか。滋賀はこの週末、リードして終えたクォーターがこのGAME2の第3Qだけ。奇しくもそれは川真田が唯一10分間フル出場したクォーターだった。

A千葉とのGAME2を含めこの直近3試合の内容は、特に外国籍プレーヤーが完全にそろった状態でなかなかプレーできていない滋賀にとって、川真田の進化がいかに重要であるかを示しているように思える。レギュラーシーズンは残り23試合。ここで川真田がどれだけの成果を出せるかは、滋賀のB1昇格にもパリオリンピックをにらんだ男子日本代表選考にも影響を及ぼす注目事項だ。

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