被災の酒蔵、初仕込み 氷見の髙澤酒造場

もろみ作りに精を出す髙澤社長=氷見市北大町

  ●損壊、断水乗り越え1カ月遅れで

 能登半島地震で被災した氷見市唯一の酒蔵である髙澤酒造場(北大町)は6日、新年初めてとなる日本酒の本仕込みを始めた。地震で仕込み蔵の土壁が崩れ、蔵2棟が大きく破損。断水もあって約1カ月遅れとなった。杜氏である髙澤龍一社長(47)は周囲の支えに感謝し「造れるだけでありがたい。おいしい酒にしたい」と意気込んでいる。

 余震に加え、酒造りに不可欠な水を確保できなかったことから再開は遅れたが、あきらめずに準備を進めてきた。崩れた酒蔵の壁は板を張って補強し、壊れた瓶なども片付けた。

 1月中旬に水道が復旧したことを契機に作業が始動。ほこりをかぶった仕込み蔵を掃除、洗浄、消毒した。同下旬からは酒母作りに取りかかり、この日の本仕込みにこぎつけた。

 髙澤酒造場は10月下旬から酒造りを始め、新年から純米大吟醸や大吟醸などの高級酒を造るのが通例だった。被災による作業の遅れで3月中旬が締め切りの酒類鑑評会には間に合わなくなった。髙澤社長は技術を試す場として目標にしていただけに残念に思う。時季がずれて温度管理は難しくなった。当初の予定より生産量も減る見込みだ。それでも無事に酒を造れる喜びが上回るという。

  ●愛好者から励まし

 髙澤社長にとって震度5強の揺れは初めての体験だった。今でも頭の片隅で地震が再び起きてほしくないと考える。被災後、同業者からは水の支援のほか、仕込みへの協力の申し出があった。愛好者からの励ましの声も寄せられたのが心強かった。

 この日は仕込み蔵で、髙澤社長と蔵人4人が酒母と水、麹、蒸米をタンクに入れてもろみを作り、蔵には芳醇な香りが漂った。

 髙澤社長は「この場所で酒を造れることがうれしい。どんな酒ができるかドキドキ、ワクワクしている」と話している。

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