沖縄戦で住民保護に尽力した島田叡元知事の紹介動画 神戸と那覇の高校生が共同制作で込めた思い

動画の中で平和の尊さを訴える兵庫高校の生徒(ひょうごチャンネルから)

 太平洋戦争末期に沖縄県知事を務め、戦場で住民保護に尽力した島田叡(あきら)の足跡を紹介する動画を、島田の母校・兵庫県立兵庫高校(神戸市長田区)と、激戦地となった那覇市の沖縄県立那覇高校の生徒が共同制作した。ウクライナ、パレスチナなどで戦火が絶えない中、沖縄戦の悲惨さを伝え、平和の尊さを訴えようと両校生徒が知恵を絞った。兵庫県のインターネット放送局「ひょうごチャンネル」で公開されている。(津谷治英)

 島田は1901(明治34)年、現在の神戸市須磨区生まれ。米軍上陸が迫る45(昭和20)年1月に沖縄県知事となり、食糧調達や疎開を促進した。住民や県職員と行動を共にし、同県南部の摩文仁(まぶに)付近で消息を絶った。地元では「島守」とたたえる声もある。

 動画「~過去から未来へ~あなたは島田叡さんを知っていますか」の制作は、島田の縁で72年に結ばれた兵庫、沖縄両県の「友愛提携」から50年たったことを機に提案された。兵庫高校がナレーションを担当し、沖縄での映像は那覇高校が撮影。両校で編集に取り組んだ。

 沖縄県公文書館が所蔵する生々しい戦場の記録映像を背景に、県民の4人に1人、12万人以上が犠牲になったといわれる戦史を解説。島田が部下らに「生命を大切に」と言い残した逸話などを紹介する。

 島田についての両校生徒へのインタビューや、摩文仁に建立され、島田らを追悼する「島守の塔」と兵庫県出身者の碑「のじぎくの塔」の前で、両県関係者が出席して開かれた慰霊祭の様子も伝える。

 動画の中で兵庫高校の生徒は「(動画制作を通じて)家族を失うつらさ、二度と戦争を起こしてはいけないとの思いを改めて心に刻んだ。私たち若者がその悲惨さと教訓を次の世代につないでいかなければ」などと訴える。

© 株式会社神戸新聞社