茶席の高級炭、一庫炭の窯出し 断面の菊の花模様美しく 地区唯一の生産者「山守り、伝統文化伝える」 兵庫・川西

窯から運び出される一庫炭=6日午前、川西市黒川

 茶席用の高級炭として知られる兵庫県川西市黒川地区の特産「一庫炭」の窯出しが始まった。断面に生じる模様が菊の花のように美しいことから「菊炭」とも呼ばれる黒の逸品が、高温の窯から次々と運び出される。

 原材料のクヌギが入手しやすい同地区周辺では、室町時代の頃から炭焼きが行われてきた。大阪と兵庫にまたがる北摂地域から大阪府池田市に集積された「池田炭」の中でも、一庫炭は特に良質とされたという。

 ただ、日常生活に欠かせなかった炭は次第に需要が減り、同地区一帯に40~50軒いた生産者は現在1軒だけになった。池田炭としても同府能勢町にもう1軒が残るのみだという。

 黒川地区唯一の炭焼き農家、今西学さん(52)方では1月21日に今季最初の窯入れがあった。750度に達する炎で3日間焼いた後、窯を密閉して鎮火させ、同29日に窯から出した。3.5トンの原木から約800キロの炭ができ、8日間ほどの工程を5月半ばまで15回程度続けるという。

 窯入れと窯出しの合間には山でクヌギを切り出す。今西さんは「木を切ることで山を守り、茶道という日本文化を支えていきたい」と話した。(吉田敦史)

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