致死率30%の“人食いバクテリア” 「この痛みから解放されるならなんでもいい」 感染した男性が語る壮絶な闘病体験

致死率が30%と高く、発症すると筋肉周辺が壊死する「人食いバクテリア」の患者が去年、全国で過去最多になりました。

治療を経て回復した男性が、その壮絶な経験を語りました。

(上林喜章さん)
「腫れが全体にわたってきて、血豆もどんどん大きくなって。痛くて、じっとしていられないくらい。(医師から)『最悪の場合、手術中に腕を切断するので同意して下さい』って」

愛知県小牧市に住む上林喜章さん(54)。

上林さんは8年前に「ある感染症」にかかりました。

(上林喜章さん)
「親指が、もっと腫れてきて。手全体が腫れだして握れない状況になってきて。『手術になる』『命に関わる』『もう腕を切るかもしれない』と言われたときに、この痛みから解放されるのであれば、もうなんでもいいって」

右手の親指にできた「腫れ」は2~3時間で手の全体に広がり、痛みに耐えられなくなった上林さんは小牧市内の病院を受診しました。

診断されたのは「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」。

(上林喜章さん)
「(Q:診断された時の気持ちは?)全く知らなくて『は?』っていう。夫婦で『なんですか、それは』という感じ」

この感染症、初期症状は手足の痛みや発熱などですが、致死率は30%と高く、発症すると筋肉周辺が壊死することから「人食いバクテリア」とも呼ばれています。

(上林喜章さん)
「右手が動かなくなるかもしれないので、左手で書く練習をした」

2か月で7回の手術 感染経路は不明…

上林さんは2か月間入院し、壊死した部分を切除し洗浄したうえで、太ももの皮膚を移植する手術を合わせて7回うけ、3か月のリハビリを乗り越えました。

跡は残るものの、日常生活に支障がない程に回復しました。

(上林喜章さん)
「(感染することは)交通事故より確率が、もっと低いので。運がなかったというと言い方は悪いが、たまたまですっていう。ここまで回復するなんて夢にも思っていなかった」

実は「人食いバクテリア」の患者は去年(2023年)に過去最多となり、全国で941人に。

なぜ増加しているのか医師に聞いてみると…。

(川崎医科大学附属病院 中野貴司 医師)
「『溶連菌感染症』全体が増えてきた中で、一定数の重症化する『劇症型溶血性レンサ球菌感染症』も増えてきている」

「人食いバクテリア」の主な病原体は、子どもに多く流行する「溶連菌」です。

感染者の一定割合が劇症化するとされますが、新型コロナの規制緩和などで溶連菌に感染する人自体が増えたことにより「人食いバクテリア」の患者も増えたとみられます。

ただ、劇症化するかどうかの違いは…。

(川崎医科大学附属病院 中野貴司 医師)
「残念ながら現状では、まだ(原因は)わかっていない。この『溶連菌』にかかった方の一部は、とても重いタイプの感染症になる」

上林さんは感染経路も、はっきり分からないといいます。

誰でも感染する可能性がある「人食いバクテリア」。

厚生労働省は「手や指の消毒」や「せきエチケット」といった対策の徹底を呼びかけています。

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