ハモネプ大学日本一、関学大「うたかるた」 阪神・淡路大震災で生まれた「満月の夕」アカペラで歌い継ぐ

「満月の夕」を歌い上げる「うたかるた」のメンバー=1月17日、神戸市中央区加納町6、東遊園地(撮影・笠原次郎)

 阪神・淡路大震災の被災者の心情に思いをはせた曲「満月の夕」を、関西学院大(西宮市)の学生5人によるアカペラグループ「うたかるた」がカバーし、交流サイト(SNS)で発信を始めた。同グループは昨年、楽器を使わず声だけのハーモニーを競うテレビ番組「ハモネプ2023大学日本一決定戦!」(関西テレビ系)で優勝し、一躍注目を浴びた。歌の持つ力を信じるメンバーは「被災地の大学に通う学生として歌い継いでいきたい」と決意を口にする。(石崎勝伸)

■「讃美歌のよう」、「癒やされた」

 いずれも2年生で、主旋律担当の高田育実さん(20)▽コーラスで高音域のソプラノを担う徳永晶さん(20)▽ハモネプ優勝後に加入し、メゾソプラノを歌う佐藤綾菜さん(20)▽低音域を担当する中野結衣さん(20)▽最も低い音域のベース田中大揮さん(19)-の5人。

 ハモネプで「賛美歌のようなハーモニー」と評価され、多くの視聴者から「癒やされた」と声が届き、全国のイベントで歌う機会を得た。歌の力を実感した高田さんはさらに「大学の地元に根付いた活動ができないか」と模索していたところ、父親から満月の夕を教わったという。

 〈風が吹く/港の方から/焼けあとを包むようにおどす風/悲しくてすべてを笑う/乾く冬の夕〉

■あいみょんさんもカバー

 ロックバンド「ソウル・フラワー・ユニオン」の中川敬さんと、同「ヒートウェイヴ」の山口洋さんが共作した。西宮出身のシンガー・ソングライター、あいみょんさんら多くの歌手がカバーしている。

 関学大では阪神・淡路で学生、教職員計23人が亡くなった。うたかるたのメンバーも被災地の情景を描写したこの曲を歌い、歌詞に込められた純粋な思いを伝えたいと、ハモネプ出身の作編曲家、ももんぬさんにアカペラ用のアレンジを依頼した。

 〈ヤサホーヤ/焚火を囲む/吐く息の白さが踊る/解き放て/いのちで笑え/満月の夕〉

 震災29年の今年1月17日、追悼行事が開かれた神戸・三宮の東遊園地で許可を得て歌い、その様子をX(旧ツイッター)やユーチューブなどで発信している。

■「被災者の声聴き、学びながら歌い続けたい」

 メンバーは神戸市東灘区在住の徳永さんを除き、大阪や奈良から大学に通っている。これまで震災について学ぶ機会は限られ、高田さんらは追悼行事で「震災を知らない僕らが、実際に被災した人を前に歌ってもいいのか」との葛藤があったという。

 それでも、実際に聴いた人からは「当時の記憶を思い出させてくれた」と感謝の声が寄せられた。メンバーは、神戸・阪神間で歌う機会を増やしたいと考えており「被災した人の声を含め、自分たちも学びながら歌い続けたい。記憶をつなぎ、誰かの心に寄り添えたら」と声をそろえる。

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