「被災者の表情が変わるのが目に見えてわかるのが切ない…」被災地で奮闘する支援職員の葛藤 静岡からの派遣のべ2,371人に

能登半島地震では、静岡県内から行政職員が派遣されていて被災者のためにできることを模索しています。行政にできることが限られる中、地域住民同士の助け合いで乗り越えようとする姿もあり支援のあり方を問いかけています。

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能登半島地震の発生から39日。被害の大きかった石川県能登町では、2月8日からようやくボランティアの受け入れが始まりました。石川県ではこれまでに241人が死亡、11人の安否がいまだわかっていません。

<東伊豆町住民福祉課 山田広美主査>
「天井が下がっているということなので、2次調査を希望されるならデメリットもあるんですけど、それでも2次調査申込みということであれば、いま罹災証明書をお出しするので」

先週、穴水町役場では、静岡県内の市や町から派遣された職員が罹災証明書の発行を行っていました。被害の程度によって、支援金が異なります。

<東伊豆町住民福祉課 山田広美主査>
「最初は『遠くからすみません』と言ってくださって、窓口に来てくれるんですけど、程度を知った時に表情が変わるのが目に見えてわかるのが切ないですね」

<静岡県職員>
「他の避難所を回りたいのですぐ僕も行きます」

穴水町では、静岡・奈良・栃木の職員が避難所の運営を行っています。

<栃木>
「県から派遣している職員だけで(運営を)できたほうがいいか、町の職員にいてもらった方がいいか」
<静岡>
「町の職員に昼間だけでも巡回してもらえればその時に相談できるかな」
<奈良>
「関わるフェーズが変わってきているんじゃないかということもある、今まだこの体制でいきましょうという議論も…」

山積する課題に葛藤しながらも被災者のためにできることを模索していました。

「ここに来ておしゃべりするだけでも気持ち晴れるんじゃないか」

<植田麻瑚記者>
「被害の大きかった石川県珠洲市に来ています。このあたりはほとんどの住宅が倒壊しています」

石川県珠洲市で、美容室を営んでいた岸田孝子さんです。店は倒壊し、営業できなくなりましたが、石川県外の友人から道具を送ってもらい、被災者向けのカットサービスを始めようと決意しました。

<北沢美容室 岸田孝子さん>
「じゃん!新品のはさみを送って頂いて、本当にありがたいです」

カットをするには水が必要となりますが、珠洲市では、ほぼ全域で断水が続いています。そこで手を差し伸べてくれたのは、近くで温泉施設を営む男性です。

<珠洲温泉宝湯 橋元宗太郎代表>
「うちの宿泊施設の客室の土間を使ってもらえたら」

100年以上の歴史がある珠洲温泉宝湯。地震で、施設は全壊しました。しかし…

<珠洲温泉宝湯 橋元宗太郎代表>
「がれきの隙間に顔を突っ込んで探してみたら、ちょろちょろと音が聞こえて、温泉が湧き続けているのを発見した」

崩れたがれきの中をホースでつなぎ、別館の宿泊施設の浴槽に、湧き出る湯を通しました。

<珠洲温泉宝湯 橋元宗太郎代表>
「髪を切ってもらって、ぜひお風呂にも入ってもらいたいですね。少しでも元気になればいいですよね。いつも家族、子どもたちと嫁さん切ってもらってる」

<北沢美容室 岸田孝子さん>
「久しぶりやから、させてもらわんと!練習」

「どうする?」
「ジョリジョリ」
「わたしも緊張するわ、久しぶりやし1か月ぶりですよ」

場所を貸してくれた橋元さんの息子・藍十夢くんを一番にカットしました。

<橋元藍十夢くん>
「ありがとう」

<北沢美容室 岸田孝子さん>
「畑仕事とかしてたのに、みんな避難所に座ったきりでしゃべることも同じことばっかり言ってるわと聞いていたので、ここに来ておしゃべりするだけでも、気持ち晴れるんじゃないかなと思って」

住民の助け合いと行政の継続的な支援が、復興に向けて歩き出せる活力となりそうです。

これまでに派遣された静岡県の行政職員などはのべ2,371人で、現在も現地で活動しています。南海トラフ巨大地震を見据えると決して他人事ではないと、被災者の思いに少しでも寄り添えるよう業務にあたっています。

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