工芸買って能登支援 新湊の池澄さん(輪島出身) 被害免れた品、店頭に

被災地支援を呼び掛ける池澄さん=射水市本町

 射水市新湊地区で伝統工芸品店を営む輪島市出身の池澄ゆかりさん(56)は、能登半島地震で被災した同市の事業者から被害を免れた作品を仕入れ、店頭販売を始めた。売り上げの一部は復興を目指す事業者に寄付する方針で、来店客の間でも伝統工芸の継承に向けて「買って支援」しようと手に取る姿がみられる。

 池澄さんの伝統工芸品店「kingyo omekashikomono(キンギョ オメカシコモノ)」では、輪島市で作られた拭き漆の箸や漆玉で作ったアクセサリーなどを販売している。輪島朝市で輪島塗を販売していた店の商品も仕入れ、観光客や住民から人気を集めていた。

 池澄さんは叔父が輪島塗の蒔絵職人で高校時代は輪島実業高で輪島塗を学んだ。卒業後は金沢で飲食店を営んできたが、9年ほど前に大病を患い、以降は療養しながら、つまみ細工を始めた。昨年、内川沿いなど新湊地区の風景に魅了されて移住し、11月に店を構えた。

 能登半島地震では妹と叔父の家が倒壊。店に拭き漆の箸を卸していた輪島市の高森洋子さん(80)の店舗が輪島朝市にあったが、火災で全焼した。

 池澄さんは1月13日、常連客らから寄せられた水や食べ物、靴や衣服などの支援物資を持って輪島市を訪れ、ふるさとの変わり果てた様子に衝撃を受けたという。射水にいながらできることはないか考え、なりわいとふるさと輪島の伝統工芸を生かした今回の支援策を思い立った。

 今回、店頭に並べたのは、倒壊した高森さんの自宅から持ち出した拭き漆の箸で、幸い作品に傷などは付いていなかった。店舗内には募金箱も設置しており、来店客の中には善意を寄せるとともに「被災地支援」として作品を購入する人も多い。

 今後は全国のつまみ細工仲間と協力し、被災地の成人の集いや七五三の開催時に新成人や子どもたちに髪飾りをプレゼントする計画も立てている。池澄さんは「微力かもしれないが、継続した支援を行っていきたい」と話した。

© 株式会社北國新聞社