退職金をもらった年はふるさと納税をたくさんした方がいい?

毎年、ふるさと納税をしている方も多いかと思いますが、退職金を受け取った場合はふるさと納税する金額を多くした方がお得になるのでしょうか?


ふるさと納税の仕組みを正しく理解しておこう

まずは、改めてふるさと納税の仕組みを復習しておきましょう。よくある勘違いとして挙げておきたいのは、ふるさと納税を節税と思っている人が結構いらっしゃることです。実はふるさと納税をしても節税にはなりません。納税という言葉からイメージが出来上がっているかもしれませんが、税制上は寄付金控除に該当するのです。

簡単にいうと「自分が応援したい自治体に寄付をする制度」になります。そして、手続きを行うと実質自己負担2,000円で応援したい自治体から地域の名産品などをもらえる仕組みですから、税金を先払いしてオマケをもらえる、実質的には節約と考えたほうが近いイメージかもしれません。税金は払う義務があるのだから、どうせ払うのであれば返礼品をもらえた方が良いと考えるのであればふるさと納税を利用したほうがお得といえます。

退職金を受け取った年は、ふるさと納税をたくさんした方がいいの?

次に、ふるさと納税を積極的に利用したい場合、退職金を受け取った時に多くした方が良いのか考えてみましょう。退職金といっても一時金や年金など受取方法はさまざまですから、それぞれのケースで見ていきましょう。

・退職一時金の場合
退職一時金は税制上、「退職所得」として給与など他の所得と区別して扱われます。そして、退職所得のみに応じた税率が適用される仕組みになっています。実際のところ、給与や年金などを合算した所得とは異なる税率が適用されることになるのです。

簡単に言うと、このような税率の違いから、ふるさと納税では給与や年金などの所得を合算した「総所得」を優先するルールが決められています。つまり、原則として、退職一時金に課される税金はふるさと納税の対象外となるのです。また、退職一時金は税制上優遇されているため、多くの場合は少ない税額で済みます。仮に退職所得からふるさと納税を行うことができたとしても、例年と比べて限度額が多くはならないでしょう。

・退職金が年金形式の場合
年金形式の退職金には、企業年金や企業型DCあるいはiDeCoと言われる確定拠出年金の分割受け取りなどが含まれます。これらは「雑所得」として給与や公的年金などと合算し「総所得」として扱われるのです。

前述の通り、総所得はふるさと納税の対象となりますが、退職前と比べて一般的には年収は少なくなりますから、限度額が多くなるケースは極めて少ないと考えられます

定年後のふるさと納税と住民税には注意が必要

最後になりますが、定年後に再就職をしない場合、翌年のふるさと納税には注意が必要です。そもそも、ふるさと納税は1年中行えますが、税務上の対象期間は1月1日から12月31日を1年の区切りとしています。退職時期によっては、その年の年収が少ないことも十分にあり得ます。所得が少なければ、ふるさと納税をしても全額自己負担になる、つまりメリットが得られないことも理解しておきましょう。

また、定年後は翌年の住民税についても注意が必要です。というのも、住民税は前年の所得に課せられる税金になるからです。退職一時金については、あらかじめ住民税は差し引かれて支給されるので問題はありませんが、気をつけたいのは、退職した年の給与にかかる住民税です。定年退職の翌年に無収入になった場合は、前年の高い給与で計算された税金を納める必要があるからです。事前に想定しておらず、住民税の納付書が送られてきて金額が高くてびっくりしたというケースも耳にします。

なお、退職月によって住民税の納め方が異なることも知っておきたいポイントです。具体的には1月から5月の退職については、退職金から原則として一括徴収されますが、6月から12月の退職については事前によく考えて手続きをしておかないと翌年になって役所から送られてくる納税通知書で自分で納付することになります。

そのため、退職一時金がある場合は、翌年の住民税の納付額をキープしておくなどで対策をしておきましょう。また、前年、すなわち退職する年にふるさと納税を限度額まで行うことで翌年の住民税を少なくする効果があります。

さらに、使える控除を最大限利用することも考えておきたい対策です。例えば、大学生の子供の国民年金保険料を納付して社会保険料控除を受ける、家族全員の医療費を合算して控除を受ける、離れて暮らす親に仕送りをしていれば扶養控除を受ける、などが挙げられます。可能な限り控除を増やすことで住民税だけでなく所得税を減らすこともできるため、退職する年になったらよく考えておきましょう。

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