廃棄ニンジンを動物の餌に バイオパークとJA島原雲仙が協力 フードロスの削減に貢献

動物たちの餌として運び込まれたニンジン=西海市、長崎バイオパーク

 長崎バイオパーク(西海市西彼町)とJA島原雲仙(島原市)は、出荷基準を満たさず廃棄されるニンジンを、動物の餌として有効活用する取り組みを始めた。フードロスの削減に貢献するとともに、商品価値を生み出すことで収益の向上や生産者の所得増につなげる。
 仲介したのは農林中央金庫(農林中金)長崎支店。天候不順などで一定量発生する廃棄品の処分が、同JAや生産者の大きな負担となっていると実情を聞き、活用案を模索してきた。餌代の高騰に悩んでいた同園に利用と購入を持ちかけ、管理や運搬方法などを3者で検討した。
 同JAが選果の過程で出た廃棄ニンジンを一時的に保管し、島原市にんじん部会の酒井農園がバイオパークに運搬。供給見通しが立てにくいことや保管施設の問題などから、その時々の状況に応じて取り組む。
 JA島原雲仙や農林中金長崎支店によると、2021年度の県内のニンジン生産量は約3万3千トン。同JA管内は県内最大の産地で、約1万6千トンと約5割を占めている。このうち約1千トンが曲がったりひび割れがあったりするなどの規格外品。8割はジュースなどの加工品にしたり、畜産用の餌に利用したりしている。残り2割の200トンほどは産業廃棄物として処分している。

カピバラにニンジンを与える来園者

 一方、バイオパークでは、ニンジンは動物たちの主食の一つとなっており、カピバラだけでも平日で1日当たり約30キロを消費する。ウクライナ情勢などの影響で餌代が全般的に上がっており、安く仕入れることが課題となっている。
 同JAの営農部担当者は「(運搬費用の問題もあるが)物価高騰で餌代が負担になっている動物園の支援になれば」と話し、同園は「環境にも優しく、費用を抑えられれば、その分、施設の投資に回せる」と期待を寄せた。
 農林中金長崎支店の吉沢純一副支店長は「定期的に供給できる仕組みの確立とともに、廃棄処分されている他の野菜や、近隣の農協にも広げられれば」と語った。

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